同じ「人に物を」なのに、to と for が分かれる
基本的な文型の記事で、第4文型(S V O O)を学びました。「人に物を与える」型で、目的語を二つとる文です。
- I gave him a book.(私は彼に本をあげた)
この第4文型は、目的語の順番を入れ替えて、第3文型(S V O)に書き換えられることが知られています。そのとき、後ろに回る「人」の前に前置詞が現れます。
- I gave a book to him.(私は本を彼にあげた)
ここで多くの学習者が、ある壁にぶつかります。前置詞が to のときと for のときがあるのです。
- I gave a book to him.(give は to)
- I bought a book for him.(buy は for)
どちらも「彼に本を」と言っているのに、なぜ give は to で、buy は for なのか。さらに困ったことに、
- 誤:I bought a book to him.
- 誤:I gave a book for him.
のように取り違えると不自然になります。この to と for の使い分けが、第4文型の書き換えでつまずく最大のポイントです。
結論を先に言うと、この違いも暗記する必要はありません。to と for という前置詞が、それぞれ違う意味を持っていて、動詞の性質に応じて自然と選ばれているだけです。この記事では、まず to と for の根っこの意味(§2)を押さえ、to をとる動詞(§3)と for をとる動詞(§4)を整理し、最後にどちらか迷ったときの見分け方(§5)を示します。
この記事は、第4文型を書き換えるときの to / for に話を絞ります。go to school や arrive at the station のような「自動詞に付く前置詞」は、別の仕組みの話です。そちらは自動詞・他動詞の記事で扱っています。
なぜ to と for で分かれるのか ― 前置詞の根っこの意味
to と for の使い分けを理解する鍵は、前置詞そのものが持つコアイメージにあります。前置詞は単なる「接着剤」ではなく、それぞれ固有の意味を持っています。その意味が、動詞との相性を決めているのです。
to のコアイメージは「到達」です。ある地点に向かって進み、そこに届く。go to school(学校へ届く=行く)の to と同じで、第4文型の書き換えに出てくる to も、物が相手のところへ届くことを表しています。
- I gave a book to him. … 本が him のところへ届く
for のコアイメージは「利益・目的」です。「〜のために」「〜に向けて」という、相手のためを思って何かをする方向性を表します。
- I bought a book for him. … 彼のために本を買った
この二つの違いが、動詞の使い分けに直結します。ポイントは、その動作に「受け取る相手」が必ず要るかどうかです。
「与える(give)」「送る(send)」「見せる(show)」のような動作は、受け取る相手がいて初めて成立します。誰にも渡さない「give」はありえません。物が相手に届くことが動作の本質なので、「到達」を表す to が選ばれます。
一方、「買う(buy)」「作る(make)」「料理する(cook)」のような動作は、相手がいなくても、自分一人で完結します。誰のためでなくても、本を買うことも、ケーキを作ることもできます。そこに「彼のために」という相手を加えるとき、「利益・目的」を表す for が選ばれるのです。
| 動詞のタイプ | 相手は | 動作の本質 | 選ばれる前置詞 |
|---|---|---|---|
| give 型 | いないと成立しない | 物が相手に届く | to(到達) |
| buy 型 | いなくても完結する | 自分で完結+相手のため | for(利益・目的) |
つまり to / for の使い分けは、**動詞が「相手を必須とするか、自分だけで完結するか」**という意味の違いを、前置詞が映し出しているだけなのです。
なるほどコラム:to と for のイメージは日常表現にも生きている この二つのコアイメージは、第4文型に限らず英語のあちこちで一貫しています。to は「a train to Tokyo(東京行きの電車)」「give it to me(私に渡す)」のように到達点へ向かう感覚を、for は「a present for you(あなたのためのプレゼント)」「cook for the family(家族のために料理する)」のように利益・目的の感覚を、いつも保っています。前置詞のコアイメージをつかんでおくと、第4文型の書き換えだけでなく、英語全体が見通しよくなります。
to をとる動詞 ― 受け取る相手が必須
まず、書き換えで to をとる動詞です。これらは「物を相手のところへ届ける」タイプで、受け取る相手がいないと動作が成立しません。だから「到達」を表す to と相性がよいのです。
代表的な動詞を挙げます。
| 動詞 | 第4文型(S V O O) | 第3文型(S V O + to) | 意味 |
|---|---|---|---|
| give | I gave him a book. | I gave a book to him. | 与える |
| send | She sent me a letter. | She sent a letter to me. | 送る |
| tell | He told us the truth. | He told the truth to us. | 伝える |
| show | I showed her the photo. | I showed the photo to her. | 見せる |
| teach | She teaches us English. | She teaches English to us. | 教える |
| lend | He lent me his car. | He lent his car to me. | 貸す |
| pass | Pass me the salt. | Pass the salt to me. | 手渡す |
これらに共通するのは、**「A から B へ、物や情報が移動する」**という性質です。give は物が、tell は言葉が、teach は知識が、それぞれ相手のところへ向かって移動します。その「移動して到達する先」を示すのが to です。
「誰にも見せない show」「誰にも送らない send」が動作として宙に浮くことからわかるように、これらの動詞は相手の存在を前提にしています。だからこそ、相手への到達を表す to が選ばれるのです。
for をとる動詞 ― 自分だけで完結し、相手は「ため」
次に、書き換えで for をとる動詞です。これらは自分一人でも動作が完結するタイプで、相手は「〜のために」という形で添えられます。だから「利益・目的」を表す for と相性がよいのです。
| 動詞 | 第4文型(S V O O) | 第3文型(S V O + for) | 意味 |
|---|---|---|---|
| buy | I bought her flowers. | I bought flowers for her. | 買う |
| make | She made me a cake. | She made a cake for me. | 作る |
| cook | He cooked us dinner. | He cooked dinner for us. | 料理する |
| get | I got him a ticket. | I got a ticket for him. | 手に入れる |
| find | She found me a seat. | She found a seat for me. | 見つける |
| choose | He chose her a gift. | He chose a gift for her. | 選ぶ |
これらに共通するのは、相手がいなくても、その動作だけで完結するという性質です。誰のためでもなく花を買うこと、ケーキを作ること、料理することは、すべて成立します。
- I made a cake.(私はケーキを作った)… これだけで文が成り立つ
ここに「彼のために」を加えるとき、物が彼に移動して到達するというより、「彼の利益・目的のためにその動作をする」というニュアンスになります。だから to ではなく for が選ばれるのです。
なるほどコラム:第4文型にできない「相手のため」もある for をとる動詞には、第4文型(S V O O)にできるもの(buy / make など)と、そもそも第4文型にしにくいものがあります。たとえば「彼のためにドアを開けた」は I opened the door for him. とは言えますが、I opened him the door. とは普通言いません。これは open が「相手に物を渡す」動詞ではないからです。for は「〜のために」と幅広く使えるため、第4文型の書き換え以外の場面でも広く登場します。本記事では、第4文型と関わる buy / make 型に話を絞っています。
見分け方 ― 「相手がいなくても成立する?」と問う
to と for のどちらを使うか迷ったら、動詞について一つだけ問えば判断できます。
「その動作は、相手がいなくても成立するか?」
- 相手がいないと成立しない(give, send, show…)→ to
- 相手がいなくても自分だけで成立する(buy, make, cook…)→ for
具体的に、二つの動詞で試してみましょう。
- give(与える):「誰にも与えない give」は成立しない。相手が必須 → to
- make(作る):「誰のためでもない make」は成立する(ただ作ればいい)。相手は任意 → for
| 問い | give | make |
|---|---|---|
| 相手なしで動作は成立する? | しない(渡す先が要る) | する(一人で作れる) |
| 相手の位置づけ | 物が届く先 | 動作のための相手 |
| 選ばれる前置詞 | to | for |
この問いは、基本的な文型の「動詞が要素を呼び込む」という考え方とも響き合います。give は意味からして「受け取る相手」を呼び込む動詞なので to、make は相手を必須としない動詞なので、相手を足すときは for で添える ― どちらも動詞の意味から自然に決まっているのです。
つまずきポイント
to と for の使い分けで間違えやすい点を整理します。
つまずき1:to と for を取り違える
もっとも多い誤りです。動詞の性質を考えず、どちらかに統一してしまうケースです。
誤:I bought a present to her.
正:I bought a present for her.(buy は自分だけで完結する動作 → for)
誤:I gave a present for her.
正:I gave a present to her.(give は相手が必須の動作 → to)
迷ったら §5 の問いに戻りましょう。「相手がいなくても成立するか?」 ― give は成立しない(to)、buy は成立する(for)。動詞ごとに判断するのが正解です。
つまずき2:すべての第4文型が書き換えられると思う
第4文型なら必ず to / for で書き換えられる、と思い込む誤りです。実際には、書き換えにくい動詞があります。
- 誤:It cost me 1000 yen. → It cost 1000 yen to me.
- 正:It cost me 1000 yen.(cost は第4文型のまま使い、to / for への書き換えはしない)
cost(〜の費用がかかる)や take(〜の時間がかかる)などは、第4文型の形で使うのが普通で、to / for を使った書き換えにはなじみません。「第4文型 → 書き換え」は give / buy 型で成り立つパターンであって、すべての動詞に当てはまるわけではない、と押さえておきましょう。
つまずき3:of をとる特殊な動詞がある
to / for 以外の前置詞をとる動詞もあります。代表が ask です。
- I asked him a question.(私は彼に質問した)
- 書き換え:I asked a question of him.
ask は to でも for でもなく of をとります。これは例外的な形なので、「ask は of」と個別に覚えておけば十分です。数は多くないので、to / for の原則を押さえたうえで、こうした少数の例外を知っておく、という順序がおすすめです。
まとめ早見表
第4文型を書き換えるときの to / for を一覧にします。
| to をとる動詞 | for をとる動詞 | |
|---|---|---|
| 動作の性質 | 相手が必須(物が届く) | 自分だけで完結(相手はため) |
| コアイメージ | to=到達 | for=利益・目的 |
| 代表的な動詞 | give, send, tell, show, teach, lend, pass | buy, make, cook, get, find, choose |
| 例 | I gave a book to him. | I bought flowers for her. |
判定はこの一問だけです。
- 書き換えたい動詞について、**「相手がいなくても、その動作は成立するか?」**を問う。
- 成立しない(渡す・送る・見せる相手が要る)→ to
- 成立する(一人で作る・買う・料理できる)→ for
- cost / take など、そもそも書き換えない動詞もある。
- ask は例外的に of をとる。
to / for の使い分けは、暗記リストではありません。その動詞が相手を必須とするか、自分だけで完結するか ― 動詞の意味を読めば、前置詞は自然と決まります。これは「動詞が文の形を決める」という、シリーズを貫く考え方の、もう一つの現れです。
次に読むとよい記事
to / for の使い分けは、第4文型の理解とセットで身につきます。土台と次のステップを確認しておきましょう。
- 基本的な文型 ― 第4文型(S V O O)を含む5文型の全体像。書き換えの出発点
- 自動詞・他動詞 ― go to / arrive at など「自動詞に付く前置詞」はこちら
- 使役動詞 make・have・let・get ― 同じ動詞の語法シリーズ。第5文型(SVOC)の深掘り
- 授与動詞と第4文型 ― 第4文型の「与える・奪う」二方向の移動を深掘り
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