自動詞と他動詞 ― 動詞が「対象」を呼ぶか呼ばないか

自動詞と他動詞の違いを「動詞が対象(目的語)を呼び込むか」から理解する。前置詞が要る理由、enter・discuss など間違えやすい動詞、自他両用の動詞までreasoning-firstで整理します。

自動詞・他動詞とは「対象を呼ぶか呼ばないか」

英語の動詞には、後ろに目的語(O)を必要とする動詞と、必要としない動詞があります。前者を他動詞、後者を自動詞と呼びます。この区別は、英語学習でつまずきやすい次のような疑問の、すべての根っこにあります。

  • この動詞、目的語は要るのか要らないのか
  • なぜ go には to が要って、enter には要らないのか
  • この文は結局どの文型なのか

これらは別々の悩みに見えて、実は一つの問いに集約されます ―その動詞は「対象」を呼び込むのか、呼び込まないのか。これさえ押さえれば、上の疑問はまとめて解けます。

この記事は、基本的な文型の続きにあたります。文型の記事では、「文型を決めているのは動詞だ」という考え方を立てました。動詞がどんな要素を呼び込むかで文型が決まる、という発想です。そのなかで、

  • 対象(O)を呼び込まず、S と V だけで完結する動詞 → 第1文型(S V)
  • 対象(O)を呼び込む動詞 → 第3文型(S V O)

という対比が出てきました。この**「対象を呼び込むか/呼び込まないか」こそが、自動詞と他動詞の違いそのもの**です。

呼び方対象(O)を中心の文型日本語のイメージ
自動詞呼び込まない第1文型 S V「S が〜する」で完結
他動詞呼び込む第3文型 S V O「S が O を〜する」
  • I sleep.(私は眠る)… sleep は対象を呼ばない → 自動詞
  • I love you.(私はあなたを愛している)… love は対象(you)を呼ぶ → 他動詞

「眠る」は、何かを眠るわけではありません。動作は主語の中で完結します。一方「愛する」は、愛する相手がいなければ意味が宙に浮きます。この「相手が要るかどうか」が、動詞が自動詞か他動詞かを決めているのです。

この記事では、まずなぜ対象を取る動詞と取らない動詞があるのか(§2)という根本から入り、見分け方(§3)、多くの人がつまずく「前置詞が要る理由」(§4)と「同じ動詞が自動詞にも他動詞にもなる」現象(§5)を押さえ、そのうえで間違えやすい動詞(§6)を表で網羅していきます。

なぜ「対象を取る動詞/取らない動詞」があるのか

自動詞と他動詞は、文法が後から勝手に決めたラベルではありません。動詞の意味そのものが、対象を必要とするかどうかを決めています。ここを理解すると、暗記に頼らず動詞の性質を見抜けるようになります。

動詞が表す動作には、二種類あります。

一つは、主語の中で完結する動作です。「眠る」「到着する」「泣く」「存在する」 ― これらは、主語がその動作をすれば、それだけで意味が成立します。「赤ちゃんが泣いた」と言えば、何を泣いたのかを足さなくても文として完結しています。こうした動詞は対象(O)を呼び込みません ― これが自動詞です。

もう一つは、向かう先がないと意味が完成しない動作です。「愛する」「建てる」「好む」「必要とする」 ― これらは、動作の及ぶ相手がないと宙ぶらりんになります。「彼らは建てた」とだけ言われると、聞き手は「何を?」と続きを待ちます。その「何を」にあたる対象(O)を呼び込む ― これが他動詞です。

  • She plays tennis.(彼女はテニスをする)… play は「何を」プレーするかを必要とする
  • They built a house.(彼らは家を建てた)… build は「何を」建てるかを必要とする

tennis や a house を取り去ると、文の意味が完成しません。動詞自身が「対象を欲しがっている」のです。だから他動詞には目的語が要る ― これは規則の暗記ではなく、動詞の意味から導かれる必然です。

なるほどコラム:「他動詞」という名前が概念を語っている 他動詞は英語で transitive verb といいます。この trans- は「越えて・横切って」という意味の要素で、transport(運ぶ=物をある場所から越えて運ぶ)や transfer(移す)と同じ仲間です。つまり transitive とは、動作が主語から目的語へと越えて伝わっていくイメージを表しています。「愛する」という動作が、主語(I)から目的語(you)へ越えて届く ― だから transitive(他動詞)。一方 in- は否定を表す要素で、intransitive は「越えていかない=動作が主語の中にとどまる」、つまり自動詞です。用語そのものが、対象を呼ぶ・呼ばないという概念を言い表しているのです。

見分け方 ― 動詞のあとに「何を?/誰を?」を置けるか

理屈がわかったところで、実際の見分け方に移ります。難しく考える必要はありません。動詞を見たら、そのすぐ後ろに**「何を?/誰を?」と問えるか**を確かめるだけです。

  • 問えて、答え(対象)が後ろに来る → 他動詞
  • 問えない(対象がなくても文が成立する) → 自動詞
動詞「何を?/誰を?」判定
She reads ___.何を?(a book)→ 答えが要る他動詞
She slept.何を寝た?→ 問えない自動詞
He built ___.何を?(a house)→ 答えが要る他動詞
The baby cried.何を泣いた?→ 問えない自動詞

ポイントは、日本語の「を」で考えないことです。日本語の「を」は当てにならない場面があります。たとえば「公園を歩く」「空を飛ぶ」は日本語では「を」を使いますが、英語の walk や fly は基本的に自動詞です。あくまで英語の動詞そのものが「対象を欲しがっているか」で判断します。この感覚のズレが、後で見る間違えやすい動詞(§6)の原因にもなります。

前置詞が必要になる理由 ― 自動詞は対象を「直に」取れない

ここが、多くの学習者にとって最大のつまずきポイントです。「go には to が要るのに、なぜ enter には要らないのか」。この謎は、自動詞の性質から説明できます。

自動詞は、対象を呼び込みません。だから対象になりそうな名詞を、動詞の直後にそのまま置くことができません。

  • 誤:I go school.
  • 正:I go to school.(私は学校へ行く)

go は自動詞なので、school を直接後ろに置けません。そこで前置詞(to)を挟んで、「どこへ」という情報を付け足します。前置詞は、自動詞と名詞のあいだを橋渡しする役目を果たしているのです。

自動詞 + 前置詞意味前置詞が表すもの
go to school学校へ行く方向
arrive at the station駅に到着する地点
listen to music音楽を聴く対象
look at the picture絵を見る対象
talk to him彼に話す相手

前置詞の後ろの名詞は、動詞の目的語ではない

ここで決定的に重要な点があります。go to school の school は、動詞 go の目的語ではありません。前置詞 to の後ろに置かれた名詞、すなわち前置詞の目的語です。

  • I go to [school]. … school は前置詞 to の目的語であって、go の目的語ではない

この区別が、次の「ひっかけ」を解く鍵になります。

ひっかけ:前置詞があっても、第3文型ではない

次の文の文型は何でしょうか。

  • I went to the station.(私は駅へ行った)

the station という名詞があるので、つい「目的語があるから第3文型(S V O)」と考えたくなります。しかし、これは誤りです。

  • 誤:the station を目的語と見て、第3文型と考える
  • 正:go は自動詞。went(行った)だけで骨格は完結している。to the station は修飾語(M)

基本的な文型の記事で、「文型を決めるのは骨格の要素(S・V・O・C)だけで、M は数えない」と確認しました。これがまさにその実例です。to the station は「どこへ」を表す飾り(M)にすぎないので、文型のカウントには入りません。骨格は I went の S V、つまりこの文は第1文型です。

「名詞が後ろにあるかどうか」ではなく、「動詞が対象を直に呼び込んでいるかどうか」で文型を判断する ― これが、自動詞・他動詞の知識を文型に生かすコツです。

同じ動詞が自動詞にも他動詞にもなる

英語をややこしくしているのが、一つの動詞が自動詞としても他動詞としても使えるという現象です。しかしこれも、これまでの考え方で整理できます。

代表例が open です。

  • The door opened.(ドアが開いた)… 自動詞。ドアが「自然に・ひとりでに」開いた
  • I opened the door.(私はドアを開けた)… 他動詞。私が the door という対象に働きかけた

同じ open でも、対象を呼び込んでいるかで自他が変わります。下の対が、そのまま文型の違いにもなります。

例文対象(O)自他文型
The door opened.なし自動詞第1文型 S V
I opened the door.the door他動詞第3文型 S V O
The meeting started.なし自動詞第1文型 S V
We started the meeting.the meeting他動詞第3文型 S V O

見分けのイメージは単純です。

  • 〜が…する」(自然に起きる・ひとりでに変化する)→ 自動詞寄り
  • 〜を…する」(誰かが対象に働きかける)→ 他動詞寄り

これは、基本的な文型の記事で見た「同じ make が第3〜第5文型をつくる」という話と同じ現象です。動詞は型に固定でひも付いているのではなく、その文で対象を呼び込んでいるかどうかで自他が ― そして文型が ― 決まります。だからこそ「動詞が文型を決める」のです。

間違えやすい動詞

ここまでの考え方を踏まえて、多くの学習者が間違える動詞を整理します。間違いのほとんどは、日本語の助詞(〜に・〜について・〜と)につられて、不要な前置詞を付けてしまうことから起こります。§3 で触れた「日本語の『を』で判断しない」が、ここで効いてきます。

前置詞を付けがちだが、実は他動詞

次の動詞は、日本語だと「〜に」「〜について」と訳すため前置詞を付けたくなりますが、英語では他動詞で、対象を直に取ります。前置詞は不要です。

動詞意味つられる訳
enter誤:enter into the room正:enter the room部屋に入る「〜に」
discuss誤:discuss about the plan正:discuss the planその計画について議論する「〜について」
marry誤:marry with him正:marry him彼と結婚する「〜と」
reach誤:reach to the station正:reach the station駅に着く「〜に」
mention誤:mention about the topic正:mention the topicその話題に触れる「〜について」
attend誤:attend to the meeting正:attend the meeting会議に出席する「〜に」
approach誤:approach to the goal正:approach the goal目標に近づく「〜に」

コツは、これらの動詞を「前置詞の意味まで動詞自身が抱え込んでいる」と捉えることです。enter は「入る」ではなく「〜に入る」、discuss は「議論する」ではなく「〜について議論する」までを一語で表しています。だから別途前置詞を足す必要がないのです。

なるほどコラム:attend は自動詞にもなる attend は「出席する」の意味では他動詞(attend the meeting)ですが、attend to(〜に対応する・世話をする)という自動詞の使い方もあります。The nurse attended to the patient.(看護師が患者の世話をした)のように、意味が変わると自他も変わる ― §5 で見た「同じ動詞が自他両方になる」の一例です。一つの訳語で丸暗記せず、意味ごとに性質を見るのが大切です。

直に取れず、前置詞が必要な自動詞

逆に、日本語では「〜を」と訳せても、英語では自動詞なので前置詞が要る動詞もあります。§4 で見たグループです。

動詞 + 前置詞意味
go to誤:go school正:go to school学校へ行く
arrive at / in誤:arrive the station正:arrive at the station駅に到着する
listen to誤:listen music正:listen to music音楽を聴く
look at誤:look the picture正:look at the picture絵を見る
graduate from誤:graduate the school正:graduate from the schoolその学校を卒業する

ここで enter(他動詞)と arrive(自動詞)を並べると、対比がはっきりします。

  • enter the room(前置詞なし・他動詞)
  • arrive at the station(前置詞あり・自動詞)

どちらも日本語では「〜に」と訳せるのに、英語では扱いが正反対です。日本語訳ではなく、英語の動詞そのものが対象を直に呼ぶかで決まる ― この記事の一貫した立場が、ここでも当てはまります。

補足:他動詞でも「人を直に置けない」ものがある

他動詞のなかには、対象は取るものの、「人」を直接の目的語にしにくい動詞があります。代表が explain と suggest です。

  • 誤:explain me the rule
  • 正:explain the rule to me(私にルールを説明する)

explain は「ルールを説明する」のように物・事を目的語に取り、「誰に」は to で示します。「人+物」を並べる第4文型(give me a book のような形)にはできない、という点が要注意です。

ただし、この「どの動詞が人を直に置けるか/置けないか」という話は、第4文型の語法に深く関わるテーマです。本記事では「explain・suggest はこの形に注意」とだけ押さえ、詳しい仕組みは別記事(授与動詞・第4文型の語法)にゆずります。

つまずきポイント

これまでの内容を、間違えやすい形で振り返ります。

つまずき1:前置詞があるから第3文型だと思う

名詞が動詞の後ろにあると、反射的に「目的語=第3文型」と判断してしまう誤りです。

  • 誤:I arrived at the station. を、station があるので第3文型と考える
  • 正:arrive は自動詞。at the station は M(修飾語)。骨格は I arrived の S V で第1文型

前置詞の後ろの名詞は、動詞の目的語ではなく前置詞の目的語です。文型を数えるときは、§4 で見たとおり前置詞句(M)を取り去ってから骨格を見ます。

つまずき2:日本語の「を/に/について」につられる

日本語の助詞を頼りに前置詞の要不要を判断すると、§6 の動詞でつまずきます。

  • 誤:discuss about the plan(「〜について」につられて about を足す)
  • 正:discuss the plan(discuss が「〜について議論する」を一語で表す)

英語の動詞が対象を直に呼ぶかどうかは、日本語訳とは無関係です。動詞ごとの性質として捉えましょう。

つまずき3:自他両用の動詞で型を固定して考える

open や start のような動詞を「いつも他動詞」「いつも自動詞」と決めつける誤りです。

  • The door opened.(自動詞・第1文型)と I opened the door.(他動詞・第3文型)は、同じ open でも別の使い方
  • 「〜が…する(自然に起きる)」なら自動詞、「〜を…する(働きかける)」なら他動詞

動詞は使われ方で自他が変わります。文ごとに「対象を呼び込んでいるか」を見るのが正解です。

まとめ早見表

自動詞・他動詞の判断と、文型への結びつきを一覧にします。

自動詞他動詞
対象(O)を呼び込まない呼び込む
「何を?/誰を?」置けない置ける
後ろに名詞を置くとき前置詞が必要(go to school)直に置ける(enter the room)
中心の文型第1文型 S V第3文型 S V O/第4文型/第5文型
sleep, arrive, go, happen, existlove, build, enter, discuss, make

迷ったときは、次の3ステップで判定できます。

  1. 「何を?/誰を?」を置けるか
    • 置ける → 他動詞(対象を呼び込んでいる)
    • 置けない → 自動詞
  2. 後ろの名詞に前置詞が要るか
    • 前置詞を挟む(go to, arrive at)→ 自動詞の可能性が高い。その名詞は M(修飾語)で、文型には数えない
    • 直に置ける(enter, discuss)→ 他動詞
  3. イコール関係になっていないか
    • 後ろの語が主語とイコール(S=C)→ 自他の問題ではなく第2文型(be, look, seem…)
    • 目的語とイコール(O=C)→ 第5文型(make, call, find, keep…)

最後にもう一度。自動詞・他動詞は、暗記する分類ではありません。その動詞が動作の向かう対象を必要としているかという、意味からくる性質です。「対象を呼び込むか/呼び込まないか」を読み取れれば、目的語の要不要も、前置詞の要不要も、そして文型も、一つの問いから導けます。

次に読むとよい記事

自動詞・他動詞は、文型を決める分岐点でした。土台と次のステップを合わせて確認しておきましょう。