would は、つかみどころがない?
助動詞 would は、英語学習者にとって、もっともつかみどころのない語の一つかもしれません。いろいろな場面に顔を出すのに、意味がバラバラに見えるからです。
- He said he would come.(彼は来ると言った)… will の過去
- I would play here as a child.(子どものころ、よくここで遊んだ)… 過去の習慣
- I would like some tea.(お茶をいただきたいのですが)… 丁寧な希望
- I would help you if I could.(できることなら手伝うのに)… 仮定の帰結
「来ると言った」「よく遊んだ」「いただきたい」「手伝うのに」── これらに共通点があるようには、なかなか見えません。would を「これは過去」「これは丁寧」と、用法ごとにバラバラに覚えると、混乱してしまいます。
しかし、助動詞 willの記事で見たとおり、would は will の過去形です。そして、これまで助動詞 canの could、助動詞 mayの might で見てきたように、助動詞の過去形には、ある共通の働きがありました ── 「一歩引いて、距離をとる」です。would の多彩な顔も、すべてこの一つのコアから説明できます。
この記事では、まず would のコアイメージ(§2)を押さえ、will の過去(§3)、過去の習慣(§4)、控えめ・丁寧(§5)、そして仮定の帰結(§6)という四つの使い方を、「距離」という一本の軸で整理していきます。
would のコアイメージ ― will を「一歩引いた位置」から
would の根っこにあるのは、たった一つの感覚です。
will(そうする・そうなると見定める)を、一歩引いた位置から述べる。
助動詞 willのコアは、「これから先そうする・そうなると、今見定める」でした。would は、その will を過去形にしたものです。そして過去形には、「今・ここ・現実から、一歩離れる」という働きがあります。would は、will の「見定め」を、少し離れた位置から ── 直接ではなく、一歩引いて ── 述べるのです。
この「一歩引く・距離をとる」が、どこに向かって離れるかで、would の意味が枝分かれします。
- 時間の上で離れる → 過去(will の過去・過去の習慣)
- 現実から離れる → 仮定(もし〜なら…だろう)
- 相手との距離をとる → 丁寧・控えめ(押しつけない言い方)
どれも「一歩引く」点では同じです。離れる先が、時間なら「過去」、現実なら「仮定」、相手への踏み込みを控えるなら「丁寧」になる、というだけです。
実は、この「過去形=距離をとる」という働きは、would に限りません。
- can → could(過去/丁寧な依頼)
- may → might(弱い推量/控えめ)
- will → would(過去/丁寧・仮定)
助動詞 canで見た「丁寧な Could you ~?」、助動詞 mayで見た「控えめな might」── どれも、過去形が「現実から一歩引く」ことで、控えめさや丁寧さを生んでいました。would は、その「距離をとる助動詞」の代表格なのです。「would は、will を一歩引いた位置から述べている」── この一点を押さえて、四つの使い方を見ていきましょう。
使い方1 ― will の過去(〜するだろうと言った)
一つめは、いちばん素直な使い方 ── will の過去形としての would です。これは、§2 の「距離」が、時間の上で過去に離れた場合です。
would がよく登場するのは、「過去の時点で、これから先のことをどう見ていたか」を述べる場面です。とくに、過去の発言や考えを伝えるときに使われます。
- He will come.(彼は来るだろう)→ He said he would come.(彼は来るだろうと言った)
- I think it will rain.(雨が降ると思う)→ I thought it would rain.(雨が降ると思った)
「言った」「思った」のように、主節が過去になると、その中の will は would に変わります。これは、過去の時点に視点を移したことで、will も一歩過去へ引きずられた、という現象です(このような時制のそろえ方を「時制の一致」と呼びます)。
- 現在の視点:I know he will help.(彼が手伝うと、今わかっている)
- 過去の視点:I knew he would help.(彼が手伝うと、わかっていた)
ここでの would は、「過去の時点から見た、これから先の見定め」── つまり、時間の上で一歩引いた will です。
使い方2 ― 過去の習慣(よく〜したものだ)
二つめは、「よく〜したものだ」という、過去の習慣です。これも時間の上で過去に離れた would ですが、こちらは「過去に繰り返していたこと」を表します。
- When I was a child, I would play in this park.(子どものころ、よくこの公園で遊んだものだ)
- My grandfather would tell us stories every night.(祖父は毎晩、私たちに物語を話してくれたものだ)
過去にくり返し行われた動作を、「あのころは、よくそうしたものだ」と振り返るニュアンスです。懐かしむような響きがあり、思い出を語るときによく使われます。
used to との違い
過去の習慣は、used to でも表せます。would と used to には、少し違いがあります。
- I would go fishing on Sundays.(日曜にはよく釣りに行ったものだ)… 過去の繰り返しの動作
- I used to live in Osaka.(昔は大阪に住んでいた)… 過去の状態・習慣
would は「くり返した動作」に使い、過去の状態(住んでいた、〜が好きだった、など)には使えません。「住んでいた」のような状態には used to を使います。一方 used to は、動作にも状態にも使えます。迷ったら、状態なら used to、と覚えておくとよいでしょう。
使い方3 ― 控えめ・丁寧(〜したいのですが/〜していただけますか)
三つめは、控えめ・丁寧の would です。これは、§2 の「距離」が、相手との間合いに向かった場合です。現実から一歩引くことで、押しつけがましさを消し、ていねいな響きを生みます。
would like ― 「〜がほしい」のていねい版
would の丁寧用法で、もっともよく使うのが would like です。want(〜がほしい)を、やわらかく上品にした言い方です。
- I want some coffee.(コーヒーがほしい)… 直接的
- I would like some coffee.(コーヒーをいただきたいのですが)… ていねい
would like は、「(もしよろしければ)〜がほしいのですが」と、一歩引いて控えめに望みを伝える表現です。レストランでの注文や、ていねいに頼みたい場面で活躍します。I’d like と短縮されることも多いです。
Would you ~? ― ていねいな依頼
相手に何かを頼むときも、would を使うとていねいになります。
- Will you help me?(手伝ってくれる?)… ふつうの依頼
- Would you help me?(手伝っていただけますか?)… よりていねいな依頼
助動詞 canで、Can you ~? より Could you ~? がていねいだと見ました。would も同じで、Will you ~? より Would you ~? のほうが、一歩引いたていねいな依頼になります。could と would、どちらも「過去形が距離を生み、丁寧さになる」という、同じ仕組みです。
使い方4 ― 仮定の帰結(もし〜なら、…だろう)
四つめは、「もし〜なら、…だろう」という、仮定の帰結を表す would です。これは、§2 の「距離」が、現実から離れた場合です。現実にはそうでないことを、「もし(現実と違って)〜だったら」と仮定し、その結果を would で述べます。
- I would help you if I had time.(時間があれば、手伝うのに)… 実際は時間がない
- If I were rich, I would buy a house.(お金持ちなら、家を買うのに)… 実際は金持ちでない
- That would be nice.(それはいいですね=もしそうなれば、すてきでしょう)
これらの would は、「現実にはそうでないが、もしそうなら、こうなるだろう」という、現実から一歩離れた見定めを表しています。「時間があれば手伝う(実際はない)」「お金持ちなら買う(実際は違う)」── どれも、現実と異なる仮定の世界での結果を述べているわけです。
この「現実から離れる」働きこそ、§2 で見た would のコアそのものです。過去形が「今・現実から一歩引く」ことで、「現実にはありえないこと」を表せるのです。
仮定法は、別の記事で
この「もし〜なら…だろう」という言い方は、文法では仮定法と呼ばれ、英語の中でも大きなテーマの一つです。仮定法には、if のあとの動詞をどんな形にするか(If I were ~ のように、過去形を使う)など、独特のルールがあります。
ここでは、「would は、現実から離れた仮定の結果を表せる」という、コアからつながる点だけを押さえておけば十分です。仮定法のくわしい仕組み ── if 節の作り方、現在の仮定と過去の仮定の違いなど ── は、別の記事であらためてじっくり扱います。would が仮定の帰結に使えるのも、「一歩引いて、現実から距離をとる」という、この記事で見てきたコアの延長線上にある、と理解しておきましょう。
つまずきポイント
would で間違えやすい点を整理します。
つまずき1:would をすべて「過去」だと思う
would を見たら過去、と決めつける誤りです。
- I would like some water.
これは「水がほしかった(過去)」ではなく、「水をいただきたいのですが(丁寧な現在の希望)」です。§5 のとおり、would には丁寧・仮定など、過去以外の用法があります。would like や Would you ~? は、過去ではありません。
つまずき2:後ろの動詞を原形にしない
助動詞とはの共通ルールどおり、would の後ろは原形です。
- 誤:He would comes. / I would liked some tea.
- 正:He would come. / I would like some tea.
would も助動詞なので、後ろは原形です。三単現の s も過去形も付きません。would like を「過去だから」と liked にしないよう注意しましょう。
つまずき3:would like を like と混同する
would like(〜がほしい)と like(〜が好き)を、取り違える誤りです。
- I like coffee.(コーヒーが好きだ)… 好み
- I would like coffee.(コーヒーをいただきたい)… ほしい(注文・希望)
would like は「好き」ではなく、「ほしい・〜したい」という希望です。レストランで I like coffee. と言うと「コーヒーが好きです」になってしまい、注文になりません。「ほしい」なら would like です。
つまずき4:will と would の丁寧さの差を意識しない
依頼で、Will you ~? と Would you ~? を同じだと思ってしまう誤りです。
- Will you wait?(待ってくれる?)… ふつう
- Would you wait?(お待ちいただけますか?)… ていねい
§5 のとおり、Would you ~? のほうが、一歩引いたていねいな依頼です。相手やあらたまった場面では、would を選ぶとよいでしょう。
まとめ早見表
would の使い方は、すべて「will を一歩引いた位置から述べる(距離をとる)」というコアから、離れる先によって枝分かれします。
| 使い方 | 離れる先 | 例文 |
|---|---|---|
| will の過去 | 時間(過去へ) | He said he would come. |
| 過去の習慣 | 時間(過去へ) | I would play here. |
| 控えめ・丁寧 | 相手との距離 | I would like ~ / Would you ~? |
| 仮定の帰結 | 現実から | I would help you if ~ |
過去形が「距離」を生む助動詞は、would だけではありません。
| 現在形 | 過去形 | 過去形の働き |
|---|---|---|
| can | could | 過去/丁寧な依頼 |
| may | might | 弱い推量/控えめ |
| will | would | 過去/丁寧・仮定 |
would は、過去・習慣・丁寧・仮定という用法を、別々に覚えるものではありません。根っこにあるのは、**「will を一歩引いた位置から述べる=距離をとる」**という一つのコアです。その距離が、時間に向かえば過去、相手に向かえば丁寧、現実に向かえば仮定になります。「一歩引いている」── そう捉えれば、would のつかみどころのなさは、一本の筋に変わります。
次に読むとよい記事
would は、助動詞の過去形が持つ「距離」の働きを、もっともよく表す例でした。関連する記事を合わせて確認しておきましょう。