toやaboutが要らない動詞 ― discuss・enter・reachはなぜ前置詞を付けないのか

英作文や英会話で、こんな間違いをしたことはありませんか。

  • ✗ Let’s discuss about the plan.(その計画について議論しよう)
  • ✗ I entered into the room.(部屋に入った)
  • ✗ He married with her.(彼は彼女と結婚した)

どれも、日本語としては自然な発想です。「〜について議論する」「〜に入る」「〜と結婚する」——だから about, into, with を付けたくなる。ところが英語では、これらはすべて前置詞なしが正解です。

  • ✓ Let’s discuss the plan.
  • ✓ I entered the room.
  • ✓ He married her.

なぜ、日本語では当たり前に付く「〜について」「〜に」「〜と」が、英語では消えてしまうのか。そして、どの動詞で前置詞が要らないのかを、どう見分ければいいのか。

この記事は、その問いに一つの理屈で答えます。バラバラに見える「前置詞を付けない動詞」の正体は、たった一つの原理——他動詞は目的語を「直接」とる——に集約されます。これさえつかめば、discuss も enter も marry も、丸暗記せずに説明がつくようになります。

この記事は、自動詞・他動詞を完全攻略で扱った「動詞が文の構造を決める」という考え方の、実践編にあたります。自動詞と他動詞の大枠をまだ押さえていない場合は、先にそちらを読むと、この記事の理解がぐっと深まります。

他動詞は目的語を「直接」とる ― だから前置詞が入る隙がない

他動詞と自動詞、決定的な違い

英語の動詞は、目的語を直接とれるかどうかで、大きく二つに分かれます。

種類目的語のとり方
他動詞目的語を直接とる(前置詞なし)discuss the plan
自動詞目的語を直接とれない(前置詞が必要talk about the plan

同じ「その計画について話す/議論する」でも、動詞によって形が変わります。

  • discuss the plan(discuss は他動詞 → 直接)
  • talk about the plan(talk は自動詞 → about が必要)

この違いがすべての出発点です。他動詞は、目的語を直接とる動詞。だからこそ、動詞と目的語の間に前置詞が入り込む隙がありません。

「直接とる」を図で見る

他動詞と目的語の関係は、動詞の力が目的語にまっすぐ届くイメージです。

【他動詞】discuss the plan

discuss ──────→ the plan

(動詞の力が目的語に直接届く。間に何も要らない) 【自動詞】talk about the plan

talk ──→ about ──→ the plan

(動詞だけでは目的語に届かない。about が橋渡しをする)

他動詞 discuss は、目的語 the plan に直接つながります。一方、自動詞 talk は、それ単体では目的語に届かず、about という前置詞の「橋」を必要とします。

ここで大事なのは、前置詞は「自動詞が目的語に届くための橋」だということです。他動詞はもともと目的語に直接届くので、橋は要りません。むしろ橋(前置詞)を架けてしまうと、「直接とる」という他動詞の性質と衝突して、文法的に誤りになります。

  • ✗ discuss about the plan(他動詞なのに、不要な橋を架けている)
  • ✓ discuss the plan(他動詞は直接でよい)

「他動詞に前置詞を付けてしまう」というミスの正体は、要らない橋を架けてしまうことだったわけです。

なぜ間違えるのか、は次のセクションへ

ここまでで「他動詞は直接とるから前置詞は要らない」という原理は見えました。ですが、本当の疑問はその先です——わかっていても、なぜ discuss about と言いたくなってしまうのか

その犯人は、英語の側ではなく、私たちの母語である日本語の中に潜んでいます。次のセクションで、その正体を突き止めます。

なぜ前置詞を付けたくなるのか ― 日本語の助詞という"犯人"

犯人は、日本語の「〜について」「〜に」「〜と」

他動詞に前置詞を付けてしまうミスは、英語力の問題ではありません。日本語の助詞を、無意識に英語の前置詞へ翻訳してしまうことが原因です。

もう一度、冒頭の3つの間違いを見てください。今度は日本語と並べます。

日本語つい言ってしまう英語正しい英語
その計画について議論するdiscuss about the plandiscuss the plan
部屋入るenter into the roomenter the room
彼女結婚するmarry with hermarry her

気づきましたか。間違いの前置詞は、すべて日本語の助詞の直訳です。「について」→ about、「に」→ into、「と」→ with。日本語で目的語の前に付く助詞が、そのまま英語の前置詞として顔を出してしまう。これが「幻の前置詞」の正体です。

日本語には助詞が要る、英語の他動詞には要らない

なぜこのズレが起きるのか。日本語と英語で、目的語の示し方が根本的に違うからです。

日本語は、語と語の関係を助詞で示す言語です。「計画を議論する」「計画について議論する」のように、名詞のうしろに助詞を付けて、それが動詞とどう関わるかを表します。助詞がないと、文の意味が成立しません。

一方、英語の他動詞は、語順そのもので関係を示します。「動詞のすぐ後ろに置かれた名詞が目的語」というルールがあるので、印(前置詞)を付けなくても、位置だけで「これが目的語だ」とわかる。だから他動詞は前置詞を必要としないのです。

【日本語】助詞で関係を示す

計画 を 議論する ← 「を」が無いと関係が不明

計画 について 議論する 【英語の他動詞】語順で関係を示す

discuss the plan ← 動詞の直後 = 目的語。印は不要

つまり、日本語話者が他動詞に前置詞を付けてしまうのは、「目的語には印が要る」という母語の感覚を、英語にも持ち込んでしまうためです。英語の他動詞は語順だけで足りるので、その印(前置詞)はむしろ邪魔になる——この発想の転換が、ミスを根本から防ぎます。

だから「日本語の助詞」は当てにならない

ここから実践的な教訓が一つ導けます。「日本語にどんな助詞が付くか」で英語の前置詞を判断してはいけない、ということです。

「〜について」だから about、「〜に」だから to や into——この発想で前置詞を付けると、相手が他動詞だったときに必ず間違えます。判断の基準は日本語の助詞ではなく、その英語の動詞が他動詞か自動詞か。これだけです。他動詞なら、日本語にどんな助詞が付いていようと、英語では前置詞なしで直接つなぐ。

では、具体的にどの動詞が「前置詞を付けない他動詞」なのか。日本語の感覚だと特に間違えやすい、頻出の動詞を見ていきましょう。

前置詞を付けない他動詞 ― 頻出リスト

以下は、日本語の助詞につられて前置詞を付けがちだが実は他動詞、という頻出の動詞です。「つい付けてしまう前置詞」と「日本語の訳」を併記します。

動詞意味✗ 付けがちな形✓ 正しい形
discuss〜について議論するdiscuss aboutdiscuss it
enter〜に入るenter intoenter the room
reach〜に着くreach toreach the station
marry〜と結婚するmarry withmarry her
mention〜について言及するmention aboutmention it
approach〜に近づくapproach toapproach the door
attend〜に出席するattend toattend the meeting
answer〜に答えるanswer toanswer the question
resemble〜に似ているresemble toresemble his father
oppose〜に反対するoppose tooppose the plan

並べてみると、犯人がよく見えます。日本語の「について」「に」「と」が、about / into / to / with という幻の前置詞を呼び寄せている。でも英語ではどれも他動詞なので、目的語を直接とるのが正解です。

覚え方のコツ:この10語を「前置詞なしリスト」として丸暗記する必要はありません。大事なのは、**「日本語で助詞が付くからといって、英語でも前置詞が要るとは限らない」**という原理のほう。迷ったら「この動詞は他動詞か?」と問い、辞書で他動詞(記号 vt.)と確認できれば、前置詞は付けない。リストは「特に間違えやすい代表例」として眺めておけば十分です。

特殊例:意味で他動詞・自動詞が変わる動詞

やや発展的ですが、同じ動詞でも、他動詞として使うか自動詞として使うかで形が変わるものがあります。

動詞他動詞(前置詞なし)自動詞(前置詞あり)
answeranswer the question(質問に答える)answer to the boss(上司の指示を仰ぐ/責任を負う)
attendattend the meeting(会議に出席する)attend to the customer(客に対応する)

answer the question は「質問に答える」(他動詞・直接)ですが、answer to … になると「〜に対して責任を負う/指示を仰ぐ」という別の意味の自動詞になります。前置詞の有無が、意味そのものを変えるわけです。

こうした例があるからこそ、「前置詞が付くかどうか」を丸暗記ではなく、「いま他動詞として使っているのか、自動詞として使っているのか」という視点で捉えることが大切になります。

つまずきポイント

つまずき1:自動詞と他動詞で「似た意味の別動詞」を混同する

「前置詞を付けない他動詞」と、「前置詞が必要な自動詞」で、意味の近い動詞がペアで存在することがあります。これを取り違えると、正しいほうにまで前置詞を付けたり外したりしてしまいます。

他動詞(前置詞なし)自動詞(前置詞あり)意味
discuss the plantalk about the planその計画について話す/議論する
enter the roomgo into the room部屋に入る
reach the stationarrive at the station駅に着く
answer the questionreply to the question質問に答える

左右はほぼ同じ意味ですが、動詞が違えば形も違います。discuss は他動詞だから直接、talk は自動詞だから about が必要。「意味が同じなら形も同じ」ではない——形を決めるのは意味ではなく、その動詞が他動詞か自動詞か、です。

「about を付けるべきか」と迷ったら、使う動詞が discuss なのか talk なのかを先に決める。動詞さえ決まれば、前置詞の要否は自動的に決まります。

つまずき2:句動詞(動詞+前置詞のセット)と混同する

「他動詞は前置詞を付けない」と覚えた直後にぶつかるのが、look at / listen to / wait for のような句動詞の存在です。「これらは前置詞が付いているじゃないか」と混乱しがちです。

ですが、これらは話が別です。look / listen / wait は自動詞で、前置詞とセットで初めて目的語に届きます。

  • listen to music(listen は自動詞 → to が橋渡し)
  • hear music(hear は他動詞 → 直接)

listen と hear はどちらも「聞く」に近い意味ですが、listen は自動詞なので to が要り、hear は他動詞なので直接とる。ここでも、意味ではなく動詞の種類が形を決めているという原則は変わりません。句動詞は「自動詞+前置詞」のセットなので、他動詞の話とは切り分けて理解してください。

つまずき3:日本語の「を」だけを頼りにする

「日本語で『を』が付く動詞は他動詞」と覚えると、一見うまくいきそうですが、これも万能ではありません。

  • 「部屋入る」→ enter(他動詞):日本語は「に」だが英語は他動詞
  • 「彼女結婚する」→ marry(他動詞):日本語は「と」だが英語は他動詞

日本語が「を」以外の助詞(に・と・について)でも、英語では他動詞、というケースが山ほどあります。日本語の助詞と英語の他動詞・自動詞は、対応していない。だからこそ、最終的な判断は「日本語の助詞」ではなく「英語の動詞そのものの性質(辞書の vt. / vi.)」に委ねるのが確実です。

まとめ早見表

核心の原理

他動詞自動詞
目的語のとり方直接(前置詞なし)前置詞が必要
discuss the plantalk about the plan
前置詞付けると誤り付けないと誤り

他動詞は目的語を直接とる。だから前置詞を付けると、不要な橋を架けることになり、誤りになる。

前置詞を付けない頻出他動詞

動詞意味
discuss〜について議論するdiscuss aboutdiscuss it
enter〜に入るenter intoenter the room
reach〜に着くreach toreach the station
marry〜と結婚するmarry withmarry her
mention〜に言及するmention aboutmention it
approach〜に近づくapproach toapproach the door
attend〜に出席するattend toattend the meeting
answer〜に答えるanswer toanswer the question
resemble〜に似ているresemble toresemble his father
oppose〜に反対するoppose tooppose the plan

判断の手順

  1. 前置詞を付けるか迷ったら、まずその動詞が他動詞か自動詞かを確認する(辞書の vt. / vi.)
  2. 他動詞なら、日本語にどんな助詞が付いていても、前置詞なしで直接つなぐ
  3. 自動詞なら、適切な前置詞(橋)が必要
  4. 「日本語の助詞(について・に・と)」で判断しない——それが幻の前置詞を呼ぶ原因

迷ったときの原点は一つ——形を決めるのは、日本語の助詞ではなく、英語の動詞の種類

次に読むとよい記事

  • 自動詞・他動詞を完全攻略 — この記事の土台となる「動詞が文の構造を決める」という考え方を、自動詞・他動詞の大枠から解説しています。前置詞の要否は、突き詰めればこの区別に行き着きます。
  • to と for の使い分け — 同じ「前置詞」をめぐる話でも、こちらは第4文型(give it to him / buy it for him)の書き換えで to と for が分かれる理由を扱います。前置詞の感覚をさらに広げたいときに。
  • 基本的な文型 — 他動詞・自動詞の区別は、英文を5つの型に整理する「文型」の理解と直結します。動詞の性質が文全体の骨組みをどう決めるかを、俯瞰したいときに。