there is / are とは「〜がある・いる」
英語には、「〜がある」「〜がいる」と、ものや人の存在を伝える定番の表現があります。それが there is / there are です。
- There is a book on the desk.(机の上に本が(一冊)ある)
- There are some children in the park.(公園に子どもが何人かいる)
意味はシンプルで、「〜がある・いる」。多くの教材では、この形をそのまま暗記しましょう、と教えます。しかし、少し立ち止まって考えると、不思議な点があります。
文頭の there です。there は「そこ」という意味の単語のはずです。だとすると There is a book on the desk. は「そこに、机の上に本がある」となり、「そこ」と「机の上に」が二重になって、意味がちぐはぐになります。実際には、この文に「そこ」という意味はありません。
- There is a book on the desk. … 「そこ」とは訳さない。「机の上に本がある」
では、この there は一体何なのでしょうか。なぜ「ある」と言うのに、わざわざ there を文頭に置くのでしょうか。ここを理解すると、there is / are は暗記する例外表現ではなく、英語の根本的な仕組みのあらわれだと見えてきます。
この記事では、まずなぜ there を立てるのか(§2)を英語の語順の原則から解き明かし、それが基本的な文型で学んだ第1文型とどうつながるか(§3)を確認します。そのうえで、つまずきやすい is と are の使い分け(§4)を整理していきます。
なぜ there を立てるのか ― 英語は「新しいもの」を後ろに置く
there の正体を理解する鍵は、英語が持つある大原則にあります。それは ──
英語は、「相手がまだ知らない新しいもの」を、文の後ろに置きたがる。
会話や文章では、情報には二種類あります。聞き手がすでに知っているもの(旧情報)と、まだ知らない初登場のもの(新情報)です。英語には、旧情報を先に、新情報を後ろに置くという自然な流れがあります。「すでに分かっているものから話し始めて、新しいものを後ろで提示する」という順序です。
ここで、「机の上に本がある」と言いたい場面を考えてみましょう。この「本」は、聞き手にとって初めて登場する新情報です。これを英語にするとき、素直に主語にすると、こうなります。
- A book is on the desk.
文法的にはこれで間違いではありません。しかし、初登場の新情報である a book が、いきなり文の先頭(主語)に来ています。英語の感覚では、これは少し据わりが悪いのです。新しいものは後ろに置きたいのに、文頭に来てしまっているからです。
そこで英語は、うまい工夫をします。文頭の主語の位置に、仮の置きもの として there を立て、本当に伝えたい新情報(a book)を後ろに回すのです。
- There is a book on the desk. … there で場所を埋め、新情報の a book を後ろへ
この there は、「そこ」という場所を指しているのではありません。「これから新しいものが登場しますよ」と前もって知らせる、露払いのような役目を果たしています。主役(a book)の登場を告げる、前座のようなものだと考えるとわかりやすいでしょう。
だから there is / are は、「ある・いる」を表すと同時に、英語の「新情報は後ろに」という大原則を忠実に守った形なのです。「そこ」と訳さないのは、there がもう場所の意味を担っていないからです。
なるほどコラム:意味が消えた there(虚辞の there) この there は、もともとは「そこ」という場所を表す副詞でした。それが「そこに(存在する)」という使われ方を重ねるうちに、しだいに「場所」の意味が薄れ、最終的には新情報の登場を告げる目印だけが役目として残りました。こうした、本来の意味を失って文法的な役割だけを担う語を、専門的には「虚辞(きょじ)」と呼びます。文法用語では existential there(存在の there)とも言います。over there(あそこに)のような場所の there とは、いまや別物になっているのです。同じ綴りでも役割がまったく違う、というのは英語にときどき見られる現象です。
文型から見る ― 第1文型の主語を後ろに回した形
§2 で見た「新情報を後ろに回す」という操作を、基本的な文型で学んだ文型の知識で分解してみましょう。there is / are の構造が、いっそうはっきりします。
出発点は、ふつうの第1文型の文です。
- A book is on the desk.(S=a book、V=is、M=on the desk)
これは「主語(S)+ be動詞(V)+ 場所を表す修飾語(M)」という、第1文型(S V)に飾り(M)が付いた形です。文型を数えるときは M を外すので、骨格は A book is、つまり第1文型でした。
この文の主語 a book を後ろに回し、空いた主語の位置に there を置いたものが、there is / are の文です。
- There is a book on the desk.
ここで決定的に大事なのは、**be動詞(is)の後ろにある a book こそが、この文の「本当の主語」**だということです。there は主語の位置に座っているだけの仮の置きものであって、文の意味上の主語は、後ろに回った a book なのです。
| 文 | 見かけの主語の位置 | 本当の主語 |
|---|---|---|
| A book is on the desk. | a book | a book |
| There is a book on the desk. | there(仮) | a book(後ろ) |
「本当の主語は be動詞の後ろにある」 ── この一点が、次に見る is と are の使い分けを理解する土台になります。
is と are の使い分け ― 「本当の主語」に合わせる
there is / are でいちばんつまずくのが、is と are(be動詞)の使い分けです。ここでも、原則はとてもシンプルです。
be動詞は、後ろにある「本当の主語」の数に合わせる。
§3 で見たとおり、文の本当の主語は there ではなく、be動詞の後ろの名詞でした。だから be動詞は、その後ろの名詞が単数か複数かで決まります。
- There is a book on the desk.(本が一冊 → 単数 → is)
- There are three books on the desk.(本が三冊 → 複数 → are)
there は主語ではないので、be動詞は there には合わせません。あくまで後ろの名詞を見て決めます。
| 後ろの主語 | be動詞 | 例文 |
|---|---|---|
| 単数 | is | There is a cat in the garden. |
| 複数 | are | There are two cats in the garden. |
時制が変われば、be動詞もそれに応じて変化します。考え方は同じで、つねに「後ろの主語の数」に合わせます。
| 時制 | 単数 | 複数 |
|---|---|---|
| 現在 | There is ~ | There are ~ |
| 過去 | There was ~ | There were ~ |
| 未来 | There will be ~ | There will be ~ |
未来は will be で単複が同じですが、現在・過去は単数(is / was)と複数(are / were)で形が変わります。
ひとつ実践的な注意です。会話では、複数の主語であっても、最初の一つに引きずられて There’s(There is)と言ってしまうことがあります。
- 誤:There is two books on the desk.
- 正:There are two books on the desk.(本当の主語 two books は複数)
books が複数なのですから、be動詞は are です。「文頭の there を主語だと思って is にしてしまう」のが典型的な誤りなので、つねに後ろの名詞を見てから be動詞を選ぶ習慣をつけましょう。
使い方の広がり ― 否定・疑問、人にも物にも
there is / are の基本がつかめたら、否定文・疑問文への展開を押さえましょう。be動詞の文なので、作り方は be動詞のルールに従います。特別な操作は要りません。
否定文 ― 「〜がない・いない」
否定文には二通りの作り方があります。
| 作り方 | 例文 | 意味 |
|---|---|---|
| be動詞 + not | There isn’t a chair in the room. | 部屋にいすがない |
| no を使う | There is no chair in the room. | 部屋にいすがない |
とくに no を使う形(There is no ~)は、「ひとつも〜ない」という存在の打ち消しを、すっきり表せる便利な形です。複数のものについては There are no ~ となります(There are no chairs in the room.)。
疑問文 ― 「〜がありますか・いますか」
疑問文は、be動詞を there の前に出します。
- There is a problem.(問題がある)
- Is there a problem?(問題がありますか)
答え方も be動詞の文と同じです。
- Is there a station near here?(この近くに駅はありますか)
- ― Yes, there is. / No, there isn’t.
複数なら Are there ~? になります(Are there any questions?)。
「ある」も「いる」も there
日本語では、物には「ある」、人や動物には「いる」と使い分けますが、英語の there is / are は、物にも人にも同じように使えます。
- There is a pen on the table.(テーブルにペンがある)… 物
- There is a man at the door.(ドアのところに男の人がいる)… 人
英語では「存在する」という一点で物も人もまとめて扱うので、日本語の「ある/いる」の区別を気にする必要はありません。後ろの主語が単数か複数かだけを見れば大丈夫です。
つまずきポイント
there is / are で間違えやすい点を整理します。多くは「there の正体」と「本当の主語」を意識すれば防げます。
つまずき1:there を「そこ」と訳す
§1 で見たとおり、there is / are の there に「そこ」の意味はありません。
- 誤:There is a book on the desk. を「そこに本が机の上にある」と訳す
- 正:「机の上に本がある」(there は訳さない)
この there は新情報の登場を告げる目印で、場所を指していません。場所は on the desk の方が表しています。「そこ」と訳したくなったら、それは over there(あそこに)など別の there だと考えましょう。
つまずき2:be動詞を there に合わせる
文頭の there を主語だと思い込み、be動詞を後ろの名詞に合わせ忘れる誤りです。
- 誤:There is many people in the hall.
- 正:There are many people in the hall.(本当の主語 many people は複数)
§4 のとおり、be動詞は there ではなく、後ろの本当の主語に合わせます。people は複数なので are です。
つまずき3:「すでに知っているもの」を there is で出す
これは there is / are の核心にかかわる、少し高度なつまずきです。there is / are は「新情報を後ろに置く」形でした。逆に言うと、聞き手がすでに知っている既知のものには、there is / are を使いません。
- 誤:There is the book on the desk.
- 正:The book is on the desk.(その本は机の上にある)
the book は「(お互いに分かっている)その本」という既知のものです。既知のものは新情報ではないので、there is で後ろから登場させる必要がありません。素直に The book を主語にして、ふつうの第1文型で言います。同じように、固有名詞(Tom など)や my pen のような「特定できるもの」も、there is / are では使いません。
- 誤:There is Tom in the room.
- 正:Tom is in the room.(トムは部屋にいる)
見分けの目安は、a / some が付くような「初登場のもの」なら there is、the / 固有名詞のような「既知のもの」なら there is を使わない、です。この区別は、英語の「新情報・旧情報」の感覚そのものであり、次に学ぶ冠詞(a と the の使い分け)にも、そのまま受け継がれていきます。
まとめ早見表
there is / are の形を一覧で整理します。
| 項目 | 単数 | 複数 |
|---|---|---|
| 現在 | There is ~ | There are ~ |
| 過去 | There was ~ | There were ~ |
| 未来 | There will be ~ | There will be ~ |
| 否定 | There is not(isn’t)/There is no ~ | There are not(aren’t)/There are no ~ |
| 疑問 | Is there ~? | Are there ~? |
使うときの考え方は、次の二段階です。
- これは新情報かを確かめる。a / some が付くような初登場のものなら there is / are が使える。the や固有名詞のような既知のものなら、there is / are は使わず、それを素直に主語にする。
- 後ろの本当の主語を見て、be動詞の数(is / are)と時制を合わせる。there は主語ではないので、there には合わせない。
there is / are は、「〜がある・いる」を表す決まり文句として丸暗記するものではありません。その根っこには、基本的な文型の第1文型(主語を後ろに回した形)と、「新しいものは後ろに置く」という英語の情報構造の原則があります。there は、その新情報の登場を告げるために主語の位置を埋める、仮の置きものでした。この仕組みが見えると、なぜ there と言うのか、なぜ be動詞を後ろに合わせるのかが、一つの理屈でつながります。
次に読むとよい記事
there is / are は、英語の語順と情報構造のあらわれでした。土台や関連するテーマを合わせて確認しておきましょう。
- 基本的な文型 ― there is / are の土台になる第1文型(S V)
- 文の要素 ― 主語(S)や修飾語(M)が文の中で果たす役割
- 自動詞・他動詞 ― be動詞のような「存在を表す動詞」の考え方
- 冠詞 a と the ― 「初登場(a)か既知(the)か」を名詞のレベルで示す標識
なお、この記事で出てきた「新情報(a)か、既知のもの(the)か」という区別は、冠詞 a / the の使い分けにそのまま直結します。冠詞についての記事も、今後あわせて参照できるようにする予定です。