不定詞とは ― to + 動詞で「これから〜する」を名詞・形容詞・副詞に

不定詞(to + 動詞の原形)を「to の『→(これから向かう)』というコアから、動詞を名詞・形容詞・副詞として使えるようにするもの」と捉えて理解する。3つの用法と原形不定詞の全体像を reasoning-first で整理します。

動詞を、別の働きで使いたい

英語を組み立てていると、「動詞を、動詞以外の働きで使いたい」場面が出てきます。たとえば、「私は読むことが好きだ」と言いたいとき。

  • I like … (私は…が好きだ)

この like の後ろには、「好きな対象」=名詞が来ます。I like music.(音楽が好き)のように。では、「読むこと」を置きたいときは、どうすればよいでしょうか。「読む」は動詞 read ですが、

  • 誤:I like read.

read をそのまま置くことはできません。read は動詞であって、「読むこと」という名詞ではないからです。動詞を、名詞のように使う ── そのための仕掛けが、この記事で扱う不定詞です。正しくは、こうなります。

  • 正:I like to read.(私は読むことが好きだ)

read の前に to を付けた to read が、「読むこと」という名詞のような働きをして、like の対象になっています。この to + 動詞 の形が不定詞です。

品詞の記事で、単語には名詞・動詞・形容詞・副詞といった種類(品詞)があると見ました。不定詞のすごいところは、動詞を、名詞や形容詞や副詞のように働かせられる点です。動詞一つあれば、to を付けるだけで、文の中でいろいろな役割を果たせるようになります。

この記事は、不定詞の全体像をつかむための総論です。まず不定詞の形(§2)とコアイメージ(§3)を押さえ、三つの用法の全体像(§4)、そして to のない「原形不定詞」(§5)を整理します。一つひとつの用法のくわしい使い方は、別の記事であらためて深く扱います。

不定詞とは ― to + 動詞の原形

不定詞の形は、とてもシンプルです。

to + 動詞の原形

to の後ろに、動詞の原形(変化していない、素の形)を置きます。to read、to go、to eat、to be ── どれも不定詞です。

ここで大事なのは、to の後ろが必ず原形だということです。助動詞とはの記事で、助動詞の後ろは原形になる、と見ました。それは、後ろの動詞が「動作そのもの(素の形)」を表すからでした。不定詞の to も同じで、後ろには動作の素の形=原形が来ます。

  • 正:to read(to の後ろは原形)
  • 誤:to reads / to reading / to read(過去形)

主語が三人称単数でも(to reads ではない)、過去のことでも(to read の過去形にはしない)、不定詞の形は to read のまま変わりません。「主語や時制によって形が変わらない=定まっていない」ことから、「定詞(形が定まらない詞)」と呼ばれます。

なぜ、to を付けるだけで、動詞が名詞や形容詞のように働けるのでしょうか。その秘密は、to という語が持つ「あるイメージ」にあります。次の節で見ていきましょう。

不定詞のコアイメージ ― to は「→(これから向かう)」

to を付けると動詞がいろいろな働きをできるのは、to という語が持つコアイメージのおかげです。

to と for の使い分けの記事で見たとおり、前置詞の to には「ある地点へ向かって到達する」という方向のイメージ ── いわば「」── があります。go to school(学校へ向かう)、give it to him(彼の方へ渡す)の to です。

不定詞の to も、この「→」のイメージを受け継いでいます。to + 動詞は、「その動作へ向かう」という感覚を持つのです。

  • to read … 「読む」という動作へ向かう(→ read)
  • to go … 「行く」という動作へ向かう(→ go)

この「これから動作へ向かう」というイメージから、不定詞には大事なニュアンスが生まれます。それは、「これから・まだ実現していない・未来志向」という感覚です。「向かう」のですから、まだそこには到達していない ── これからすること、という色合いを帯びるのです。

  • I want to read this book.(この本を読みたい)… これから「読む」ことへ向かう願望
  • I decided to go.(行くことに決めた)… これから「行く」ことへ向かう決意

want(〜したい)、decide(決める)、hope(望む)、plan(計画する)── これらの「これからのことに向かう」動詞が、後ろに不定詞をとるのは、不定詞の「→(これから向かう)」イメージとぴったり合うからです。

なるほどコラム:不定詞(to)と動名詞(-ing)の違い 動詞を名詞のように使う方法には、不定詞(to read)のほかに、動名詞(reading) という -ing の形もあります。この二つは、しばしばニュアンスが違います。ざっくり言うと、不定詞(to)は「これから向かう」未来志向、動名詞(-ing)は「実際にしている・した」という現実・経験寄りのイメージです。たとえば I stopped to smoke.(タバコを吸うために立ち止まった=これから吸う)と、I stopped smoking.(タバコを吸うのをやめた=していた行為をやめた)では、意味がはっきり変わります。この to と -ing の違いは、別の記事(動名詞)でくわしく扱います。ここでは「不定詞の to は、これから向かうイメージ」とだけ押さえておきましょう。

三つの用法の全体像

不定詞(to + 原形)は、文の中で三つの働きをします。動詞を名詞・形容詞・副詞のいずれかのように使う、というものです。まずは全体像を、一覧でつかみましょう。

用法働き意味例文
名詞的用法名詞のように(主語・目的語・補語)〜することI like to read.(読むことが好き)
形容詞的用法形容詞のように(名詞を修飾)〜すべき・〜するためのI have a book to read.(読むべき本がある)
副詞的用法副詞のように(動詞・文を修飾)〜するために などI came to read.(読むために来た)

同じ to read でも、文の中での働きによって、三つの顔を持つことがわかります。

  • 名詞的:to read が「読むこと」という名詞のかたまりになり、like の対象(目的語)になっている。
  • 形容詞的:to read が「読むべき」と、前の名詞 a book を後ろから説明している。
  • 副詞的:to read が「読むために」と、came(来た)という動詞の目的を説明している。

これらはどれも、§3 で見た「to = 動作へ向かう(→)」というコアから生まれています。「読むことへ向かう」気持ちが、名詞のかたまり(読むこと)にも、名詞の説明(読むべき)にも、行為の目的(読むために)にもなる、というわけです。

それぞれの用法は、さらにくわしく見ていく価値があります。

  • 名詞的用法(〜すること)── 主語・目的語・補語になる使い方。別記事でくわしく扱います。
  • 形容詞的用法(〜すべき・〜するための)── 名詞を後ろから修飾する使い方。別記事でくわしく扱います。
  • 副詞的用法(〜するために・〜して)── 目的・原因・結果などを表す使い方。別記事でくわしく扱います。

この総論では、「不定詞には名詞的・形容詞的・副詞的の三つの働きがあり、どれも to の『→』から生まれている」という全体像を、しっかりつかんでおきましょう。

原形不定詞 ― to のない不定詞

これまで見てきた不定詞は、すべて「to + 原形」の形でした。ところが、英語にはto が付かない不定詞もあります。これを原形不定詞と呼びます。動詞の原形が、そのまま不定詞の働きをするものです。

原形不定詞が登場する代表的な場面が、使役動詞知覚動詞の後ろです。

  • 使役動詞:I made him go.(私は彼を行かせた)… make + 人 + 原形
  • 知覚動詞:I saw her dance.(私は彼女が踊るのを見た)… see + 人 + 原形

made him to go、saw her to dance とはせず、to のない原形 go、dance を使います。これらの動詞では、なぜ to が落ちるのでしょうか。

理由は、知覚動詞の記事でも触れたように、使役・知覚の動詞では、「させる/見る」動作と、その後の動作(行く・踊る)が、ほぼ同時に・一体となって起こるからです。「→(これから向かう)」という to のもつ時間差・隔たりがなじまないため、to が落ちて、動作がじかに続く原形になる、と考えられます。

原形不定詞のくわしい使い方 ── どの動詞が原形不定詞をとるか、知覚動詞での原形と -ing の違いなど ── は、それぞれ使役動詞知覚動詞の記事で扱っています。ここでは、「to のない不定詞(原形不定詞)もあり、使役・知覚動詞の後ろで使う」と押さえておきましょう。

つまずきポイント

不定詞で間違えやすい点を整理します。

つまずき1:to の後ろを原形にしない

to の後ろに、-ing や三単現の s、過去形を付けてしまう誤りです。

  • 誤:I want to going. / He likes to reads. / I tried to went.
  • 正:I want to go. / He likes to read. / I tried to go.

§2 のとおり、to の後ろは必ず原形です。主語が三人称単数でも、過去のことでも、to read のように原形のままにします。

つまずき2:助動詞の後ろに to を付ける

助動詞(can, will など)の後ろに、不定詞のつもりで to を付けてしまう誤りです。

  • 誤:I can to swim. / She will to come.
  • 正:I can swim. / She will come.

助動詞とはで見たとおり、助動詞の後ろは「to なしの原形」です。不定詞の to は付けません。can to swim ではなく can swim です。

つまずき3:前置詞の to と混同して原形にする

不定詞の to(後ろは原形)と、前置詞の to(後ろは名詞・動名詞)を、取り違える誤りです。

  • 不定詞の to:I want to go.(go は原形)
  • 前置詞の to:I look forward to seeing you.(to の後ろは動名詞 seeing)

look forward to ~(〜を楽しみにする)の to は、不定詞ではなく前置詞です。前置詞の後ろは名詞か動名詞なので、to seeing(to see ではない)になります。同じ to でも、不定詞か前置詞かで後ろの形が変わるので、注意しましょう(前置詞の to をとる表現は、出てきたときに個別に覚えれば十分です)。

つまずき4:原形不定詞のところに to を入れる

使役・知覚動詞の後ろに、to を付けてしまう誤りです。

  • 誤:I made him to go. / I saw her to dance.
  • 正:I made him go. / I saw her dance.

§5 のとおり、使役動詞・知覚動詞の後ろは、to のない原形不定詞です。

まとめ早見表

不定詞は、「to = 動作へ向かう(→)」というコアから、動詞を名詞・形容詞・副詞として使えるようにするものでした。

用法働き意味例文
名詞的名詞のように〜することI like to read.
形容詞的名詞を修飾〜すべき・するためのa book to read
副詞的動詞・文を修飾〜するために などI came to read.

不定詞には、形の上でも二種類あります。

種類使う場所
to不定詞to + 原形上の三用法(名詞的・形容詞的・副詞的)
原形不定詞原形のみ(to なし)使役動詞・知覚動詞の後ろ

不定詞は、三つの用法をバラバラに丸暗記するものではありません。根っこにあるのは、**「to は『→(これから動作へ向かう)』というイメージを持ち、動詞を名詞・形容詞・副詞として使えるようにする」**という一つの考え方です。「読むことへ向かう」気持ちが、名詞(読むこと)にも、名詞の説明(読むべき)にも、目的(読むために)にもなる ── この to の「→」を意識すれば、不定詞の三つの顔は、一本につながって見えてきます。

次に読むとよい記事

不定詞は、動詞を別の品詞のように使う仕掛けでした。土台や、くわしい用法を合わせて確認しておきましょう。

  • 品詞 ― 名詞・動詞・形容詞・副詞という、不定詞が「変身する先」になる品詞の基礎
  • 使役動詞 ― make / have / let の後ろで使う、to のない原形不定詞
  • 知覚動詞 ― see / hear / feel の後ろで使う、原形不定詞と -ing の違い
  • to と for の使い分け ― 不定詞の to のもとになった、前置詞 to の「→」のイメージ
  • 不定詞の名詞的用法 ― 「〜すること」を主語・目的語・補語に使う、名詞的用法の深掘り