不定詞の名詞的用法 ― 「〜すること」を主語・目的語・補語に

不定詞の名詞的用法を「to + 動詞が『〜すること』という名詞のかたまりになり、文の中で名詞が入る場所(主語・目的語・補語)に入る」と捉えて理解する。to不定詞と動名詞の使い分けまで reasoning-first で整理します。

「〜すること」を文に置く

不定詞とはの記事で、不定詞(to + 動詞の原形)には、名詞的・形容詞的・副詞的という三つの働きがあると見ました。この記事では、その一つめ ── 動詞を名詞のように使う名詞的用法を、くわしく見ていきます。

名詞的用法の不定詞は、「〜すること」という意味を表します。

  • To read books is fun.(本を読むことは楽しい)
  • I like to read books.(私は本を読むことが好きだ)
  • My hobby is to read books.(私の趣味は本を読むことだ)

どの文でも、to read books が「本を読むこと」という、一つの名詞のかたまりとして働いています。一つめは「読むこと(は)」と主語に、二つめは「読むこと(を)」と目的語に、三つめは「読むこと(だ)」と説明(補語)になっています。

つまり、名詞的用法の不定詞は、ふつうの名詞と同じように、文の中で使えるのです。文の要素の記事で、名詞は主語(S)・目的語(O)・補語(C)になれると見ました。不定詞も「〜すること」という名詞のかたまりなので、まったく同じ三つの場所に入れます。

この記事では、まず名詞的用法のコア(§2)を押さえ、不定詞が入る三つの場所 ── 主語(§3)・目的語(§4)・補語(§5)── を順に見て、最後に、名詞的用法でいちばん迷う「to不定詞と動名詞の使い分け」(§6)を整理します。

名詞的用法のコア ― 名詞が入る場所に、そのまま入る

名詞的用法を理解する鍵は、とてもシンプルです。

不定詞は「〜すること」という名詞のかたまりなので、名詞が入る場所に、そのまま入れる。

文の要素の記事で見たとおり、名詞が文の中で果たす役割は、主に三つでした。

  • 主語(S):「〜は・〜が」。Music is fun.(音楽は楽しい)の Music
  • 目的語(O):「〜を・〜に」。I like music.(音楽が好き)の music
  • 補語(C):主語とイコールで結ばれる説明。My hobby is music.(趣味は音楽だ)の music

これらの位置には、ふつう名詞(music など)が入ります。そして、名詞的用法の不定詞「to + 動詞(〜すること)」も、名詞とまったく同じように、この三つの位置に入れるのです。

  • 主語:To read is fun.(読むことは楽しい)… music の位置に to read
  • 目的語:I like to read.(読むことが好き)… music の位置に to read
  • 補語:My hobby is to read.(趣味は読むことだ)… music の位置に to read

上の music を to read(読むこと)に置きかえただけ、と考えると分かりやすいでしょう。動詞 read のままでは、これらの名詞の位置に入れませんが、to を付けて「読むこと」という名詞のかたまりにすれば、堂々と主語にも目的語にも補語にもなれる ── これが、不定詞とはで見た「to が動詞を名詞のように働かせる」ということの、具体的な姿です。

それでは、三つの位置を一つずつ見ていきましょう。

位置1 ― 主語(〜することは)

まず、不定詞が主語になる場合です。「〜することは」と、文の主語になります。

  • To learn a language is not easy.(言語を学ぶことは簡単ではない)
  • To help others makes me happy.(他人を助けることは私を幸せにする)

To learn a language(言語を学ぶこと)、To help others(他人を助けること)が、それぞれ文の主語になっています。

ただし、実際の英語では、不定詞をそのまま主語に置く文は、少しかたい・あらたまった響きになります。なぜなら、主語が長くなって、「頭でっかち」な文になりがちだからです。To learn a language is not easy. は、主語の部分(To learn a language)が長く、動詞(is)がなかなか出てきません。

そこで英語では、仮の主語 it を文頭に置き、長い不定詞を後ろに回す言い方が好まれます。

  • It is not easy to learn a language.(言語を学ぶことは簡単ではない)

文頭の it が仮の主語として場所を埋め、本当の主語である to learn a language は後ろに回っています。意味は To learn a language is not easy. と同じですが、こちらのほうが、英語としては自然でよく使われます。

この「仮の主語 it」の構文は、英語でとても重要なテーマの一つです。ここでは「不定詞が主語のとき、it で受けて後ろに回すことが多い」とだけ押さえておきましょう。この it のくわしい仕組みは、別の記事であらためて扱います。

位置2 ― 目的語(〜することを)

次に、不定詞が目的語になる場合です。「〜することを」と、動詞の目的語になります。これは、名詞的用法のなかでも、とくによく使う形です。

  • I want to go home.(家に帰ることを望む=家に帰りたい)
  • She decided to study abroad.(彼女は留学することを決めた)
  • We hope to see you again.(またあなたに会うことを望む)

want(望む)、decide(決める)、hope(望む)── これらの動詞の後ろで、不定詞が「〜することを」という目的語になっています。

ここで、不定詞とはで見たコアを思い出してください。不定詞の to は「→(これから向かう)」というイメージを持っていました。目的語に不定詞をとる動詞には、want・decide・hope・plan・promise・expect のように、「これからのことに向かう」意味の動詞が多くあります。

  • I want to go.(これから行くことを望む)
  • I plan to travel.(これから旅行することを計画する)
  • I promise to help.(これから助けることを約束する)

「望む」「計画する」「約束する」── どれも、まだ実現していない、これからのことに気持ちが向かっています。だから、「→(これから向かう)」イメージの不定詞と、相性がよいのです。コアをつかんでおくと、「なぜこの動詞は不定詞をとるのか」が、自然に納得できます。

位置3 ― 補語(〜することだ)

三つめは、不定詞が補語になる場合です。「〜することだ」と、主語を説明します。

  • My dream is to become a doctor.(私の夢は医者になることだ)
  • Her job is to teach English.(彼女の仕事は英語を教えることだ)

基本的な文型の記事で、補語(C)は主語とイコール(=)の関係になる、と見ました。ここでも同じです。

  • My dream = to become a doctor(私の夢 = 医者になること)
  • Her job = to teach English(彼女の仕事 = 英語を教えること)

「私の夢」と「医者になること」が、be動詞(is)でイコールに結ばれています。不定詞「〜すること」が、主語の中身を説明する補語になっているわけです。ここでも、不定詞が名詞のかたまりとして、補語の位置(ふつうは名詞が来る場所)にそのまま入っているのが分かります。

to不定詞と動名詞の使い分け

名詞的用法で、いちばん迷うのがここです。「〜すること」を表す方法には、不定詞(to + 動詞)のほかに、動名詞(動詞 + -ing) もあります。

  • to read(読むこと)… 不定詞
  • reading(読むこと)… 動名詞

どちらも「〜すること」で、主語・目的語・補語になれます。問題は、動詞の目的語になるとき。動詞によって、「to不定詞しかとらない」「動名詞しかとらない」「どちらもとる」が分かれるのです。

使い分けのカギ ― to は「これから」、-ing は「実際に」

ここで効くのが、不定詞とはで見たコアの対比です。

  • to不定詞 … 「→(これから向かう)」。まだしていない・未来志向
  • 動名詞(-ing) … 「実際にしている・した」。現実・経験寄り

この感覚が、目的語の使い分けに、きれいに対応します。

to不定詞をとる動詞(これから・未来志向)

want, hope, decide, plan, promise, expect など。「これから〜することを」望む・決める動詞です。

  • I want to go.(これから行きたい)
  • She decided to leave.(去ることを決めた)

動名詞をとる動詞(実際の行為・経験)

enjoy, finish, stop, mind, give up など。「実際にしている行為を」楽しむ・終える動詞です。

  • I enjoy reading.(読むことを楽しむ=実際に読んでいる)
  • He finished eating.(食べ終えた=実際に食べた行為)

「これから向かう」動詞は to、「実際の行為」を扱う動詞は -ing ── コアのイメージどおりに分かれています。

両方とれて、意味が変わる動詞

さらにおもしろいのが、to不定詞も動名詞もとれるが、意味が変わる動詞です。代表が remember, forget, stop, try です。ここでも「to=これから/-ing=した」の対比が、そのまま意味の差になります。

動詞to不定詞(これから)動名詞(した・している)
rememberremember to lock(忘れずに鍵をかける=これからすること)remember locking(鍵をかけたことを覚えている=した行為)
forgetforget to call(電話するのを忘れる=これからすること)forget calling(電話したことを忘れる=した行為)
stopstop to smoke(タバコを吸うために立ち止まる=これからする)stop smoking(タバコを吸うのをやめる=していた行為)
trytry to open(開けようとする=これから試みる)try opening(試しに開けてみる=実際にやってみる)

たとえば stop。stop to smoke は「(何かを中断して)これからタバコを吸うために立ち止まる」、stop smoking は「(していた)喫煙をやめる」── to か -ing かで、意味が正反対近くまで変わります。これも、「to はこれから向かう/-ing は実際の行為」というコアで、すっきり説明できます。

なお、動名詞そのもの(-ing が名詞になる仕組みや、その全体像)については、別の記事でくわしく扱います。ここでは、「名詞的用法の不定詞には動名詞という相棒がいて、to=これから/-ing=実際に、で使い分ける」と押さえておきましょう。

つまずきポイント

不定詞の名詞的用法で、間違えやすい点を整理します。

つまずき1:長い不定詞を、主語の頭に置いたままにする

不定詞の主語が長いのに、頭でっかちな文のままにしてしまう(不自然ではないが、こなれない)パターンです。

  • ぎこちない:To finish this work by tomorrow is impossible.
  • 自然:It is impossible to finish this work by tomorrow.(明日までにこの仕事を終えるのは不可能だ)

§3 のとおり、不定詞の主語が長いときは、仮の主語 it で受けて、不定詞を後ろに回すのが自然です。

つまずき2:動名詞をとる動詞に、to不定詞を使う

enjoy, finish などの後ろに、不定詞を使ってしまう誤りです。

  • 誤:I enjoy to read. / He finished to eat.
  • 正:I enjoy reading. / He finished eating.

§6 のとおり、enjoy・finish は「実際の行為」を扱う動詞なので、動名詞(-ing)をとります。「楽しむ・終える」対象は、これから向かうことではなく、実際の行為だからです。

つまずき3:to不定詞をとる動詞に、動名詞を使う

want, decide などの後ろに、動名詞を使ってしまう誤りです。

  • 誤:I want going home. / She decided leaving.
  • 正:I want to go home. / She decided to leave.

§6 のとおり、want・decide は「これから向かう」動詞なので、to不定詞をとります。

つまずき4:remember / forget の to と -ing を取り違える

意味が変わる動詞で、to と -ing を逆にしてしまう誤りです。

  • I remembered to lock the door.(忘れずにドアに鍵をかけた=これからすること)
  • I remembered locking the door.(ドアに鍵をかけたことを覚えていた=した行為)

§6 のとおり、これからすることなら to、した行為なら -ing です。「鍵をかけるのを忘れずに(to)」と「鍵をかけたのを覚えている(-ing)」を、意味で区別しましょう。

まとめ早見表

不定詞の名詞的用法は、「〜すること」という名詞のかたまりとして、名詞の入る三つの場所に入ります。

位置意味例文
主語〜することはTo read is fun.(多くは It is … to read.)
目的語〜することをI want to read.
補語〜することだMy hobby is to read.

目的語のときの、to不定詞と動名詞の使い分けは、次のとおりです。

to不定詞(これから向かう)動名詞(実際の行為)
とる動詞の例want, hope, decide, planenjoy, finish, stop, mind
イメージまだしていない・未来実際にしている・した

不定詞の名詞的用法は、難しく考える必要はありません。根っこにあるのは、**「to + 動詞は『〜すること』という名詞のかたまりになり、名詞が入る場所(主語・目的語・補語)にそのまま入る」**という一つの考え方です。そして、動名詞との使い分けも、不定詞とはで見た「to=これから向かう/-ing=実際にしている」というコアで、すっきり整理できます。

次に読むとよい記事

名詞的用法は、不定詞が名詞として働く使い方でした。不定詞の全体像や、ほかの用法も合わせて確認しておきましょう。

  • 不定詞とは ― 不定詞の全体像と、to の「→(これから向かう)」というコアイメージ
  • 文の要素 ― 不定詞が入る、主語(S)・目的語(O)・補語(C)という名詞の役割
  • 基本的な文型 ― 補語(C)が主語とイコールで結ばれる仕組み