名詞に「〜すべき」を付け足したい
不定詞とはの記事で見た三つの用法のうち、この記事では、動詞を形容詞のように使う形容詞的用法を扱います。
形容詞的用法の不定詞は、名詞のうしろに付いて、その名詞を「〜すべき・〜するための」と説明します。
- something to eat(何か食べるもの=食べるための何か)
- a book to read(読むべき本)
- work to do(すべき仕事)
something(何か)、a book(本)、work(仕事)といった名詞の後ろに、to eat・to read・to do という不定詞が付いて、「どんな名詞か」を説明しています。「何か」だけでは漠然としていますが、something to eat とすれば「食べるための何か」と、具体的になります。
名詞的用法では、不定詞が「〜すること」という名詞そのものになりました。今回の形容詞的用法では、不定詞が名詞を説明する側にまわります。同じ to + 動詞でも、文の中での働きが違うわけです。
この記事では、まず形容詞的用法のコア ── なぜ名詞の「後ろ」から説明するのか(§2)── を押さえ、その意味(§3)、-thing 系の語順(§4)、そして少し難しい「前置詞が残る形」(§5)を整理していきます。
形容詞的用法のコア ― 形容詞のように、ただし後ろから
形容詞的用法を理解する鍵は、ふつうの形容詞との「位置」の違いです。
品詞の記事で見たとおり、形容詞は名詞を説明する語でした。そして、ふつうの形容詞(kind, red, big など)は、名詞の前に置かれます。
- a kind person(親切な人)
- a red car(赤い車)
不定詞の形容詞的用法も、「名詞を説明する」という働きは形容詞と同じです。ところが、置かれる位置が違います。不定詞は、名詞の後ろに置かれるのです。
- a person to help(助けるべき人)… 名詞 person の後ろ
- a way to win(勝つための方法)… 名詞 way の後ろ
なぜ、不定詞は後ろから修飾するのでしょうか。それは、不定詞が「2語以上のかたまり(句)」だからです。英語には、「一語の短い修飾語は名詞の前、2語以上の長い修飾のかたまりは名詞の後ろ」という大きな原則があります。
- 短い(一語)→ 前:a kind person
- 長い(かたまり)→ 後ろ:a person to help others(他人を助けるべき人)
不定詞 to help (others) は、to + 動詞(+ α)という複数語のかたまりなので、この原則に従って、名詞の後ろに置かれるのです。「形容詞と同じ働きだが、かたまりなので後ろから」── これが、形容詞的用法の位置の理由です。
なるほどコラム:英語は「重いものを後ろに」置きたがる 「長い修飾は名詞の後ろ」という原則は、there is / there areの記事で触れた、英語の語順の感覚とも通じています。英語には、短く軽い要素を前に、長く重い要素を後ろに置こうとする傾向があります。一語の形容詞(kind)は軽いので名詞の前にすっと収まりますが、to help others のような数語のかたまりは「重い」ので、名詞の後ろに回されます。関係代名詞(a person who helps others)が名詞を後ろから説明するのも、同じ「重いものは後ろへ」という感覚によるものです。不定詞の後置修飾は、その英語らしい語順感覚の、一つのあらわれなのです。
意味 ― 「〜すべき・〜するための」(これからすること)
形容詞的用法の不定詞が表す意味は、「〜すべき・〜するための」です。なぜこの意味になるのか ── ここでも、不定詞とはで見た to のコア「→(これから向かう)」が効いています。
不定詞は「これからその動作へ向かう」イメージでした。名詞に付くと、「これからその動作をする(予定の・べき)名詞」という意味になります。
- a book to read(これから読む本=読むべき本)
- things to do(これからする物事=すべきこと)
- time to go(これから行く時間=行く時間・もう行く時間だ)
- a house to sell(これから売る家=売るための家)
どれも、「その名詞について、これから〜する」という関係です。「読む本」「すべきこと」「行く時間」── 名詞と不定詞のあいだに、「これから〜する」というつながりが生まれています。コアの「→(これから向かう)」が、名詞の説明として使われると、「これからする予定の=〜すべき・するための」になるわけです。
名詞の「中身」を説明する形
形容詞的用法には、もう一つ、少し似た形があります。名詞の中身そのものを、不定詞が説明する場合です。
- a chance to win(勝つチャンス)… チャンスの中身=勝つこと
- the ability to swim(泳ぐ能力)… 能力の中身=泳ぐこと
- a plan to travel(旅行する計画)… 計画の中身=旅行すること
- time to think(考える時間)… 時間の中身=考えること
これらは「〜すべき」と訳すより、「〜するという(中身の)」と考えるほうがしっくりきます。a chance to win は「勝つべきチャンス」ではなく、「勝つ(という)チャンス」── チャンスの中身が「勝つこと」だ、という説明です。
chance(チャンス)、ability(能力)、plan(計画)、way(方法)、time(時間)、decision(決定)といった、「中身を必要とする名詞」が、このタイプをよくとります。「何の?」と問いたくなる名詞 ── 何のチャンス? 何の能力? ── に、不定詞が「〜する(という)」と中身を与えているのです。
「〜すべき・するための」も「〜するという中身」も、根は同じです。どちらも、名詞に対して「これから〜する」という不定詞のコアが働いている、と捉えておけば十分です。
-thing / -one + 不定詞の語順
形容詞的用法で、とくによく使うのが、something / anything / nothing(-thing 系)や someone / no one(-one 系)に、不定詞を付ける形です。
- something to eat(何か食べるもの)
- anything to drink(何か飲むもの)
- nothing to do(することが何もない)
- someone to help(助けてくれる誰か)
これらの -thing / -one という代名詞も、§2 で見たとおり、不定詞を後ろに置きます。something to eat の語順です(to eat something ではありません)。
形容詞も後ろに付く
ここで、-thing 系の特徴を一つ。something などに形容詞を付けるときも、形容詞を後ろに置きます。
- 誤:a hot something
- 正:something hot(何か熱いもの)
そして、形容詞と不定詞の両方を付けるときは、「-thing + 形容詞 + to不定詞」の順になります。
- something hot to eat(何か温かい食べ物)
- something cold to drink(何か冷たい飲み物)
- nothing special to do(特別にすることは何もない)
「何か(something)→ 温かい(hot)→ 食べるための(to eat)」と、説明が後ろへ後ろへと連なります。語順を間違えやすいところなので、「-thing のあとは、形容詞 → to不定詞」と覚えておきましょう。
前置詞が残る形 ― a house to live in
形容詞的用法で、いちばん難しく、そしておもしろいのが、不定詞の最後に前置詞が残る形です。
- a house to live in(住むための家)
- a friend to talk with(話す相手=一緒に話す友達)
- a pen to write with(書くためのペン)
- a chair to sit on(座るための椅子)
a house to live in、a pen to write with ── なぜ、不定詞の最後に in や with が付くのでしょうか。to live だけ、to write だけではいけないのでしょうか。
なぜ前置詞が残るのか ― 元の文に戻してみる
この謎は、修飾される名詞を、元の文に戻してみると解けます。
「住むための家」は、もともと「その家に住む」という関係です。これを英語の文にすると、こうなります。
- live in a house(家に住む)
ここで大事なのは、live は「住む」という意味を表すのに、後ろに in が必要だということです。live a house とは言えず、live in a house と、前置詞 in がいります(自動詞・他動詞で見た、自動詞に付く前置詞です)。
この「live in a house」の a house を、不定詞で前から説明する形に組み替えると ──
- live in a house → a house to live in(住むための家)
a house が前に出ても、live が必要としていた in は、行き場を失って後ろに残るのです。だから、a house to live in となります。in を落として a house to live としてしまうと、「(何かに)住む」の「何かに」が欠けてしまい、不完全になります。
同じように考えれば、ほかの例もすべて説明できます。
- write with a pen(ペンで書く)→ a pen to write with(書くためのペン)
- talk with a friend(友達と話す)→ a friend to talk with(話す相手)
- sit on a chair(椅子に座る)→ a chair to sit on(座るための椅子)
もとの文で動詞が必要としていた前置詞(in, with, on)が、そのまま不定詞の最後に残る ── これが、前置詞が残る形のからくりです。
見分け方 ― 名詞を動詞のうしろに戻せるか
前置詞が要るかどうか迷ったら、修飾される名詞を、不定詞の動詞のうしろに戻してみるとよいでしょう。
- a house to live ? → live a house? ✕ → live in a house ○ → だから to live in
- a book to read ? → read a book? ○(前置詞いらない)→ だから to read(前置詞なし)
read a book は前置詞なしで成り立つ(read は他動詞)ので、a book to read に前置詞は要りません。一方 live は前置詞 in が必要なので、a house to live in と in が残ります。「元に戻したとき、前置詞が要る動詞かどうか」で見分けられます。
つまずきポイント
不定詞の形容詞的用法で、間違えやすい点を整理します。
つまずき1:不定詞を名詞の前に置く
形容詞のクセで、不定詞を名詞の前に置いてしまう誤りです。
- 誤:to eat something / to read a book(「何か食べるもの」「読むべき本」のつもり)
- 正:something to eat / a book to read
§2 のとおり、不定詞は名詞の後ろに置いて修飾します。
つまずき2:-thing + 形容詞 + to不定詞の語順を間違える
something に形容詞と不定詞を付けるとき、語順を取り違える誤りです。
- 誤:something to eat hot / hot something to eat
- 正:something hot to eat(何か温かい食べ物)
§4 のとおり、「-thing + 形容詞 + to不定詞」の順です。something → hot → to eat と並べます。
つまずき3:必要な前置詞を落とす
前置詞が残る形で、前置詞を忘れてしまう誤りです。
- 誤:a house to live / a pen to write
- 正:a house to live in / a pen to write with
§5 のとおり、元の文(live in a house, write with a pen)で必要な前置詞は、不定詞の最後に残ります。「動詞のうしろに名詞を戻すと前置詞が要るか?」で確認しましょう。
つまずき4:名詞的用法と混同する
同じ to + 動詞でも、名詞的用法(〜すること)と形容詞的用法(〜すべき)を取り違える誤りです。
- I want to read.(読むことを望む=読みたい)… 名詞的用法(want の目的語)
- I have a book to read.(読むべき本がある)… 形容詞的用法(a book を修飾)
名詞的用法の不定詞は、それ自体が「〜すること」という名詞になります。形容詞的用法の不定詞は、前の名詞を「〜すべき」と説明します。不定詞の前に、説明される名詞があるかを見れば、見分けられます。
まとめ早見表
不定詞の形容詞的用法は、名詞を後ろから「〜すべき・〜するための」と説明します。
| ポイント | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 位置 | 名詞の後ろ(後置修飾) | a book to read |
| 意味 | 〜すべき・〜するための | things to do(すべきこと) |
| 名詞の中身 | 〜するという(中身) | a chance to win(勝つチャンス) |
| -thing 系 | -thing + 形容詞 + to不定詞 | something hot to eat |
| 前置詞残り | 元の文で要る前置詞が残る | a house to live in |
不定詞の形容詞的用法は、ばらばらに覚えるものではありません。根っこにあるのは、**「不定詞が形容詞のように名詞を説明する。ただし、かたまりなので名詞の後ろから」**という一つの考え方です。意味が「〜すべき・するための」になるのは、不定詞とはで見た to の「→(これから向かう)」から。前置詞が残るのは、元の文で動詞が必要としていた前置詞が、行き場を失って残るから。どれも、理屈をたどれば納得できます。
次に読むとよい記事
形容詞的用法は、不定詞が名詞を後ろから説明する使い方でした。不定詞の全体像や、ほかの用法も合わせて確認しておきましょう。