動名詞とは?―「実際にしている」を表す-ing

動名詞(-ing形)の成り立ちと使い方を、to不定詞との対比から解説。「これから」の不定詞と「実際にしている」の動名詞、動詞ごとの使い分けまで丁寧に整理します。

英語を勉強していると、こんな疑問にぶつかることがあります。

「〜することを楽しむ」は enjoy to swim ? それとも enjoy swimming

正解は enjoy swimming です。では、なぜ to不定詞ではだめなのでしょうか。

「enjoy は動名詞を取る動詞だから、覚えるしかない」——多くの参考書はそう説明します。しかし、これでは似たような動詞に出会うたびに、また一つ暗記が増えていくだけです。

実は、動名詞と不定詞の使い分けには、はっきりとした「意味の理由」があります。この記事では、動名詞がどのような成り立ちを持つ言葉なのかを起点に、その理由を一つずつ解き明かしていきます。

動名詞の成り立ち―動作を「モノ」として切り取る

動名詞(gerund)は、動詞の原形に -ing をつけて名詞として使う形です。

swim(泳ぐ)→ swimming(泳ぐこと)
read(読む)→ reading(読むこと)

見た目は現在分詞(進行形で使う -ing)と同じですが、働きが違います。現在分詞は形容詞的に「〜している」状態を表すのに対し、動名詞は動作そのものを一つの名詞に変えてしまいます。

ここで、不定詞の記事で確立したイメージを思い出してください。

to =「→(これから向かう)」

不定詞の to は、もともと「方向」を表す前置詞に由来します。だからこそ to不定詞には、まだ実現していない、これから向かっていく先を指し示すニュアンスが伴います。

一方、動名詞にはそうした「方向」を示す要素がありません。動詞に -ing をつけただけの、動作そのものを名詞化した形です。ここから、次のような対比が生まれます。

核心イメージ
to 不定詞これから向かう・未実現・未来志向
動名詞 -ing実際にしている・すでに実体のある動作

enjoy は「今まさにしていること」「すでに経験していること」を楽しむ動詞です。まだ起きていない、これから向かう先のことを楽しむのは、意味として不自然です。だからこそ enjoy は動名詞と結びつくのです。

なるほどコラム: -ing は英語だけでなく、多くのゲルマン語派の言語に共通する古い名詞化のしくみに由来します。動詞から名詞を作る接尾辞として、英語では中英語期に -ing が定着しました。動作を実体化して「名詞のように扱う」という発想そのものが、この形の出発点だったのです。

もう一つ興味深いのは、動名詞が名詞になった後も、動詞としての性質を保っている点です。

Swimming in the sea is fun.
(海で泳ぐことは楽しい)

swimming は文の主語(名詞の働き)でありながら、in the sea という副詞句を後ろに従えています。これは、動名詞が「名詞に化けた動詞」であり、根っこの部分では動詞の血を引いているからです。動作を「モノ」として切り取ってはいても、その動作の中身(何を・どこで・どのように)を説明する力は、動詞のまま残されているのです。

この「実際にしている」という核心イメージが、このあとの網羅セクションで扱うすべてのルール——前置詞の後に動名詞しか置けない理由、動詞ごとの使い分け、意味上の主語——を貫く土台になります。

動名詞の働き―主語・補語・目的語になる

動名詞は名詞ですから、名詞が入る場所ならどこにでも使えます。

主語になる場合

Reading books is my hobby.
(読書は私の趣味です)

補語になる場合

My hobby is reading books.
(私の趣味は読書です)

目的語になる場合

I finished reading the book.
(私はその本を読み終えました)

なお、主語で使う場合、動名詞は文法上つねに単数扱いです。

誤:Playing video games are fun.
正:Playing video games is fun.

「動作」という一つのまとまりとして名詞化されているため、複数形にはならず、動詞も単数形で受けます。

前置詞の後は動名詞のみ―不定詞が使えない理由

前置詞(in, at, for, about, without など)の後ろに動詞を続けたいとき、使えるのは動名詞だけです。

誤:I'm interested in to learn Japanese.
正:I'm interested in learning Japanese.

She left without to say goodbye. (誤)
She left without saying goodbye. (正)

なぜ不定詞は使えないのでしょうか。ここで思い出していただきたいのが、to自体が本来「前置詞」だという事実です。前置詞は原則として、後ろに名詞(または名詞に相当するもの)を要求します。

つまり in, without といった前置詞の直後に to を置いてしまうと、前置詞が二つ連続するという構造になり、成り立ちません。

in + to swim  →  前置詞 in の後ろに前置詞 to が続いてしまう(不可)
in + swimming →  前置詞 in の後ろに名詞 swimming が続く(可)

動名詞は正真正銘の「名詞」であるため、前置詞の後ろに問題なく収まります。「実際にしている・実体のある動作」という動名詞の核心イメージは、こうした構造上の要請とも一致しているのです。

動詞ごとの使い分け―「これから」か「実際に」か

不定詞だけを目的語に取る動詞、動名詞だけを取る動詞、そして両方を取れるが意味が変わる動詞があります。これはすべて、動詞自体が持つ意味と、to/-ing の核心イメージの相性で説明できます。

to不定詞のみを目的語に取る動詞

want, hope, decide, plan, promise, expect, refuse など。

I decided to study abroad.
(私は留学することに決めた)

decide や want は、いずれも「これから先」に意識が向いている動詞です。まだ実現していない未来の行動を望んだり、決めたりするわけですから、「→これから向かう」という不定詞のイメージと自然に結びつきます。

動名詞のみを目的語に取る動詞

enjoy, finish, avoid, mind, give up, practice, consider など。

I finished writing the report.
(私はそのレポートを書き終えた)

finish は「すでに行っている動作」が終わることを表します。avoid や mind も、実際に起きる(あるいは起きている)動作を避けたり気にしたりする動詞です。まだ実現していない未来のことではなく、実体のある動作を対象にするため、動名詞と結びつきます。

両方を取るが、意味が変わる動詞

ここが、to/-ing の核心イメージが最もはっきり現れる部分です。

動詞+ to不定詞+ 動名詞
remember(これから)〜することを覚えている(すでに)〜したことを覚えている
forget(これから)〜することを忘れる(すでに)〜したことを忘れる
try〜しようと試みる(努力する)試しに〜してみる(実際にやってみる)
stop〜するために立ち止まる〜することをやめる
I remembered to lock the door.
(ドアに鍵をかけることを覚えていた=これからする行動を忘れなかった)

I remembered locking the door.
(ドアに鍵をかけたことを覚えていた=すでにした行動を記憶している)

remember to do は「これからやるべきことを覚えている」、remember doing は「すでにやったことを覚えている」。まさに、to の「これから」と -ing の「実際に・すでに」という対比そのものです。

try to do と try doing の違いも同様です。

I tried to open the window.
(窓を開けようとした=実際に開いたかどうかは分からない、向かおうとした行為)

I tried opening the window.
(試しに窓を開けてみた=実際に開けるという行動を実行してみた)

動名詞の意味上の主語

動名詞が表す動作の「主語」を示したいときは、動名詞の前に所有格(または目的格)を置きます。

I don't mind him smoking here.(口語的)
I don't mind his smoking here.(やや堅い)
(彼がここでタバコを吸っても私は気にしません)

所有格を使うのが文法的にはより丁寧・正式とされますが、日常会話では目的格(him, her, them など)もよく使われます。

なるほどコラム: 動名詞の前に所有格を置く用法は、もともと動名詞が「〜すること」という名詞そのものだったことの名残です。「彼の(する)こと」という所有関係として捉えれば、his smoking という形は自然に理解できます。動名詞が今なお動詞と名詞の二つの性質を併せ持っていることの、良い証拠と言えるでしょう。

つまずきポイント

① stop to do と stop doing の混同

誤:I stopped smoking a cigarette.(休憩のためにタバコを吸うのをやめて立ち止まった、のつもりで)
正:I stopped to smoke a cigarette.(タバコを吸うために立ち止まった)

正:I stopped smoking.(喫煙をやめた=禁煙した)

stop to do の to は「不定詞」ではなく、実は「目的(〜するために)」を表す副詞的用法の不定詞です。一方 stop doing の doing は「やめる対象」を示す目的語の動名詞です。同じ stop でも構造がまったく異なるため、混同しやすい代表例です。

② 前置詞の後についうっかり不定詞を置いてしまう

誤:I'm looking forward to see you.
正:I'm looking forward to seeing you.

look forward to の to は「不定詞のto」ではなく「前置詞のto」です。前置詞である以上、後ろには名詞(動名詞)が続きます。「不定詞のtoだ」という思い込みが、この誤りの最大の原因です。to の後ろに動詞の原形が来るか、-ing が来るかは、その to が不定詞なのか前置詞なのかを常に確認する必要があります。

③ 動名詞と現在分詞の混同

Swimming is my favorite sport.(動名詞:主語=名詞の働き)
The swimming girl is my sister.(現在分詞:形容詞の働き)

見た目が同じ -ing でも、文中でどんな働きをしているか(名詞か、形容詞か)を見極める必要があります。迷ったときは、その -ing を it や that に置き換えられるかどうかを確認してみてください。置き換えられれば動名詞です。

④ 動名詞を複数形・冠詞つきで使ってしまう

誤:The reading books is fun.
正:Reading books is fun.

動名詞はあくまで動作を表す名詞であり、数えられる「モノ」の名詞とは性質が異なります。原則として冠詞(a/the)をつけず、複数形にもしません。

まとめ早見表

to不定詞 と 動名詞 の核心イメージ

to不定詞動名詞 -ing
核心イメージこれから向かう(未実現・未来志向)実際にしている(実体のある動作)
由来前置詞 to(方向)動詞 + -ing(名詞化)
前置詞の後不可可(唯一の形)
主語での扱い単数扱い単数扱い

目的語の型で見る動詞の分類

分類代表的な動詞
to不定詞のみwant, hope, decide, plan, promise, expect, refuse
動名詞のみenjoy, finish, avoid, mind, give up, practice, consider
両方(意味が変わる)remember, forget, try, stop

意味が変わる動詞の対比

動詞+ to不定詞+ 動名詞
rememberこれから〜することを覚えているすでに〜したことを覚えている
forgetこれから〜することを忘れるすでに〜したことを忘れる
try〜しようと試みる試しに〜してみる
stop〜するために立ち止まる〜することをやめる

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