使役動詞 make・have・let・get ― 「O に〜させる」の使い分け

使役動詞 make / have / let / get の使い分けを、第5文型(SVOC)の「O=C」から理解する。目的語のあとが原形になる理由、get だけ to が要るわけ、過去分詞をとる形まで reasoning-first で整理します。

使役動詞とは「O に C させる」動詞

「子どもに部屋を掃除させた」「美容院で髪を切ってもらった」「子どもを遊ばせておいた」 ― こうした「誰かに何かをさせる/してもらう」という意味を表すのが、使役動詞です。代表的なものに make / have / let / get の4つがあります。

  • I made him clean his room.(私は彼に部屋を掃除させた)
  • I had the barber cut my hair.(私は理容師に髪を切ってもらった)
  • I let my son play outside.(私は息子を外で遊ばせた)
  • I got my friend to help me.(私は友人に手伝ってもらった)

この記事は、基本的な文型で学んだ**第5文型(S V O C)**の深掘りにあたります。第5文型の核心は「O = C」、より正確には「O が C する/O が C である」という、O と C のあいだの関係でした。

  • I made him clean his room. … him と clean のあいだに「彼が掃除する(he cleans)」という関係がある

使役動詞は、まさにこの第5文型を使って「O に、C という動作をさせる」という意味をつくり出す動詞です。O と C の関係(O が C する)はそのままに、その関係を主語が引き起こす・許すというニュアンスを加えるのが使役動詞の働きです。

この記事では、まずなぜ使役動詞のあとの動詞が「原形」になるのか(§2)という根本を押さえ、4つの使役動詞の使い分け(§3・§4)を整理し、さらに O と C が受け身の関係になるときの形(§5)まで扱います。4つの動詞を丸暗記するのではなく、「どんな力で・どんな関係でさせるのか」という意味から使い分けられるようになることを目指します。

なぜ目的語のあとが「原形」になるのか

使役動詞でまず戸惑うのが、目的語のあとに来る動詞の形です。

  • I made him go.(私は彼を行かせた)

him のあとが go という動詞の原形になっています。to go でも going でもなく、ただの go です。なぜ原形なのでしょうか。ここを理屈で理解すると、使役動詞の構造がはっきり見えてきます。

鍵は、第5文型の「O が C する」という関係です。I made him go. では、O(him)と C(go)のあいだに「彼が行く(he goes)」という、主語と動詞のような能動の関係があります。使役動詞は、この「彼が行く」という動作をそのまま・ナマのかたちで目的語のうしろに置きます。動作のナマのかたち ― それが原形です。

  • I made [him go]. … 「彼が行く」という動作を、原形 go でそのまま表している

to go(これから行く方向性)でも going(行っている途中)でもなく、「行く」という動作そのものを指すために、混じり気のない原形が使われるのです。make / have / let の3つは、この原形をとります。

使役動詞 例文
make make O 原形 She made me wait.
have have O 原形 I had him check it.
let let O 原形 They let us go.

なるほどコラム:原形をとるのは「実際にその動作が起きる」から 使役動詞のあとの原形は、文法的には原形不定詞(bare infinitive)と呼ばれます。to のつかない不定詞、という意味です。実は同じ原形不定詞は、see / hear / feel などの知覚動詞でも現れます(I saw him enter the room. 私は彼が部屋に入るのを見た)。使役と知覚に共通するのは、「O が C する動作が、実際にその場で起きる」という点です。これから起きること(to do)でも一般的な事実でもなく、目の前で現実に起きる動作だからこそ、方向性を示す to が要らず、動作そのものを表す原形が選ばれる ― そう捉えると腑に落ちます。知覚動詞のくわしい使い方は、別記事で扱う予定です。

4つの使役動詞

make / have / let / get は、どれも「O に C させる」を表しますが、させ方のニュアンスがそれぞれ違います。一つずつ見ていきましょう。

make ― 強制的にさせる

make は、相手の意思に関係なく、強制的にさせるという、もっとも強い使役動詞です。「いやでもやらせる」イメージです。

  • The teacher made the students stay after class.(先生は生徒たちを放課後居残りさせた)
  • My mother made me eat vegetables.(母は私に野菜を食べさせた)

居残りも野菜も、される側はあまり乗り気でない ― そんな状況に合います。「強制の make」と覚えておきましょう。

have ― (当然のこととして)してもらう

have は、当然の役割・仕事として、人に何かをしてもらうという中立的な使役です。強制でも許可でもなく、「その人がやって当たり前のことを、依頼してやってもらう」イメージです。仕事を頼む相手(店員・業者・部下など)によく使われます。

  • I had the mechanic fix my car.(私は整備士に車を修理してもらった)
  • She had her assistant book the flight.(彼女はアシスタントに航空券を予約してもらった)

整備士が車を直す、アシスタントが予約する ― いずれも相手の役割として自然な依頼です。「依頼・当然の have」です。

let ― 許可する・させてあげる

let は、相手がしたがっていることを、許してさせてあげるという使役です。make とは正反対で、本人の意思に沿っています。「許可の let」です。

  • My parents let me go to the concert.(両親は私をコンサートに行かせてくれた)
  • Let me help you.(手伝わせてください)

行きたい本人を行かせてあげる、手伝いたい自分にやらせてもらう ― 相手(や自分)の希望を妨げない、というニュアンスです。

get ― 説得して・仕向けてさせる(to が必要)

get は、説得したり仕向けたりして、相手にその気にさせるという使役です。そしてここが重要なのですが、get だけは目的語のあとに to が必要です。

  • 誤:I got him clean the room.
  • 正:I got him to clean the room.(私は彼を説得して部屋を掃除させた)

get は make のような直接的な強制ではなく、「働きかけて、結果としてやってもらう」という間接的なプロセスを含みます。その「これからその動作に向かわせる」という方向性が、to(〜の方へ)という前置きを呼ぶ ― そう捉えると、get だけ to がつく理由が見えてきます。

使役動詞 C の形 ニュアンス
make 原形 強制(いやでもやらせる)
have 原形 依頼・当然(してもらう)
let 原形 許可(させてあげる)
get to 原形 説得・仕向け(その気にさせる)

make / have / let は原形、get だけ to 原形。この一点が、4つを使い分けるうえでの形のポイントです。

強さ・ニュアンスの比較

4つの違いは、「どれくらい相手の意思を尊重するか」という軸で並べると、いっそうはっきりします。同じ「彼に手伝わせる/手伝ってもらう」場面で比べてみましょう。

動詞 例文 相手の意思は
make I made him help me. 無視(強制的に手伝わせた)
have I had him help me. 中立(役割として手伝ってもらった)
get I got him to help me. 説得(その気にさせて手伝ってもらった)
let I let him help me. 尊重(手伝いたい彼にやらせた)

同じ「help」でも、選ぶ動詞によって、強制から許可まで関係性がガラリと変わります。

  • 相手をむりやり動かす → make
  • 当然の役割として頼む → have
  • 説得してその気にさせる → get
  • 相手の希望どおりさせる → let

使役動詞を「すべて『〜させる』」と一括りにせず、主語と相手のあいだにどんな力関係があるかで選ぶ ― これが使い分けの核心です。日本語訳だけだとどれも「させる」になってしまいがちなので、この力関係のイメージを持っておくと、場面に合った動詞を選べるようになります。

O と C が受け身の関係になるとき ― 過去分詞

ここまでは「O が C する」という能動の関係を見てきました。I made him go. なら「彼が行く」、O(him)が C(go)を自分で行います。

ところが、O と C の関係が受け身になる場合があります。

  • I had my hair cut.(私は髪を切ってもらった)

ここで O は my hair(髪)、C は cut です。しかし髪は自分で切るのではなく、切られる側です。「髪が切る」ではなく「髪が切られる」 ― つまり O と C は受け身の関係にあります。このとき C は原形ではなく、過去分詞になります。

なぜ過去分詞なのか。これも第5文型の「O と C の関係」で説明できます。

  • O が C する(能動)→ C は原形:I had him cut my hair.(彼に切らせた/彼が切る)
  • O が C される(受け身)→ C は過去分詞:I had my hair cut.(髪を切ってもらった/髪が切られる)

過去分詞には「〜される・〜された」という受け身の意味があります(品詞や完了・受動の学習で出てくる形です)。だから「O が C される」という受け身の関係を表すために、過去分詞が使われるのです。同じ「髪を切ってもらう」でも、視点が「理容師(が切る)」か「髪(が切られる)」かで、形が変わります。

O C の形 O と C の関係
I had the barber cut my hair. the barber 原形 cut 理容師が切る(能動)
I had my hair cut. my hair 過去分詞 cut 髪が切られる(受け身)

この「過去分詞をとる形」は、おもに haveget で使われます。

  • have O 過去分詞:I had my watch repaired.(時計を修理してもらった)
  • get O 過去分詞:I got my car washed.(車を洗ってもらった)

いずれも「(人に頼んで)O を〜してもらう」という意味で、日常で非常によく使う形です。ポイントはいつも同じで、**O が C を自分でするのか(原形)、O が C されるのか(過去分詞)**を見極めることです。

つまずきポイント

使役動詞で間違えやすい点を整理します。多くは「C の形」に関するものです。

つまずき1:get に to を付け忘れる

make / have / let の感覚のまま get を使うと、to を落としてしまいがちです。

  • 誤:I got him clean the room.
  • 正:I got him to clean the room.(彼を説得して部屋を掃除させた)

get だけは「to 原形」。§3 で見たとおり、「説得して向かわせる」という方向性が to を呼びます。4つのうち get だけ別、と覚えておきましょう。

つまずき2:make / have / let に to を付けてしまう

逆に、不定詞は to が付くものという思い込みから、原形をとる3つに to を足してしまう誤りです。

  • 誤:My mother made me to eat vegetables.
  • 正:My mother made me eat vegetables.(母は私に野菜を食べさせた)

make / have / let のあとは、to のない原形です。§2 で見たとおり、「実際に起きる動作」をナマのかたちで表すため、to は不要です。

つまずき3:能動か受け身かで C の形を間違える

O と C の関係を考えず、いつも原形にしてしまう誤りです。

  • 誤:I had my hair cut it. / I had my hair cutting.
  • 正:I had my hair cut.(髪を切ってもらった)

髪は「切られる」側なので、C は受け身を表す過去分詞です。§5 のとおり、「O が C するのか/されるのか」を必ず確認しましょう。

つまずき4:make を受け身にすると to が復活する

make を受動態(be made)にすると、消えていたはずの to が現れます。

  • 能動:They made him work hard.(彼らは彼を猛烈に働かせた)
  • 受動:He was made to work hard.(彼は猛烈に働かされた)

能動文では原形 work だったのに、受動文では to work になります。これは、原形不定詞が受動態では to 不定詞の形に戻る、という英語のきまりによるものです。頻出のひっかけなので、「受け身の made のあとは to」と押さえておきましょう。

まとめ早見表

使役動詞 make / have / let / get を一覧で整理します。

動詞 C の形 ニュアンス 例文
make 原形 強制(いやでもやらせる) She made me wait.
have 原形 依頼・当然(してもらう) I had him check it.
let 原形 許可(させてあげる) They let us go.
get to 原形 説得・仕向け(その気にさせる) I got him to help me.

C の形は、O と C の関係で決まります。

O と C の関係 C の形 例文
O が C する(能動) 原形(get は to 原形) I had him cut my hair.
O が C される(受け身) 過去分詞 I had my hair cut.

使い分けの考え方は、次の二段階です。

  1. どんな力でさせるかで動詞を選ぶ。強制なら make、当然の依頼なら have、許可なら let、説得なら get。
  2. O が C を自分でするのか、されるのかで C の形を決める。する→原形(get のみ to 原形)、される→過去分詞。

使役動詞は、4つの単語と形を別々に暗記するものではありません。すべて基本的な文型の第5文型(O = C、O が C する)という同じ土台の上にあり、「どんな力で・能動か受動か」という二つの問いで形が決まります。動詞の意味から形を導く ― この記事群を貫く考え方が、ここでも当てはまります。

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