can は「可能だ」の一語
助動詞 can は、中学英語のはじめのほうで「〜できる」と習います。しかし、実際の英語では、can は「できる」以外にも、いろいろな意味で使われます。
- I can swim.(私は泳げる)… できる
- You can go now.(もう行っていいよ)… してよい
- Can you help me?(手伝ってくれる?)… してくれる?
- Accidents can happen.(事故は起こり得る)… 起こり得る
「できる」「してよい」「してくれる?」「起こり得る」── 一見、ばらばらの意味に見えます。これを一つずつ丸暗記しようとすると、混乱してしまいます。
しかし、助動詞とはの記事で見たように、一つの助動詞が複数の意味を持つのは、その助動詞が持つコアイメージが、場面によって違う方向にあらわれるからでした。can も同じです。これらの意味はすべて、can のたった一つのコア ── 「それが可能だと判断する」── から枝分かれしています。
この記事では、まず can のコアイメージ(§2)を押さえ、そこから派生する四つの意味 ── 能力(§3)・許可(§4)・依頼(§5)・可能性や推量(§6)── を整理し、最後に can の過去・未来の形(§7)を確認します。
can のコアイメージ ― 「可能だ」と判断する
can の根っこにある意味は、たった一つです。
それが可能だ(できる状態にある)と、話し手が判断する。
「泳ぐことが可能だ」「行くことが可能だ」「手伝うことが可能か?」── can が使われる場面は、どれもこの「可能だ」という判断が中心にあります。そして、その「可能性がどこからくるのか」によって、訳し方(意味)が変わってくるのです。
可能性の源は、おもに次のように分かれます。
- 可能性が、その人の能力からくる → 「〜できる」(能力)
- 可能性が、許可・規則からくる → 「〜してよい」(許可)
- 相手がそうするのは可能かとたずねる → 「〜してくれる?」(依頼)
- 可能性が、一般的な状況からくる → 「〜が起こり得る」(可能性・推量)
どれも「可能だ」という判断は共通で、その可能性が「能力なのか」「許可なのか」「状況なのか」で、日本語の訳が変わっているだけです。
- I can swim.(泳ぐ能力があって可能)
- You can go.(許されていて可能)
- Accidents can happen.(状況として起こることが可能)
このコアをつかんでおくと、can のさまざまな意味は「可能性の源が違うだけ」と整理できます。一つずつ丸暗記するのではなく、「これは何からくる『可能』か?」と考えれば、意味は自然と見えてきます。それでは、四つの意味を順に見ていきましょう。
意味1 ― 能力(〜できる)
最初の意味は、いちばん基本的な「〜できる」です。これは、可能性がその人(もの)の能力からくる場合です。
- I can swim.(私は泳げる)… 泳ぐ能力がある
- She can speak three languages.(彼女は三か国語を話せる)… 話す能力がある
- This machine can print in color.(この機械はカラー印刷できる)… その機能がある
「する力が、その人・ものの中にある」から、それが可能だ ── これが能力の can です。コアの「可能だ」が、能力という源から来ているわけです。
be able to との関係
「〜できる」は、be able to という言い方でも表せます。
- I can swim. ≒ I am able to swim.(私は泳げる)
意味はほぼ同じで、日常では can のほうがよく使われます。ただし、助動詞とはで見たとおり、助動詞は二つ重ねられないので、will や must と組み合わせたいときは、can が使えず be able to の出番になります。
- 誤:I will can swim.
- 正:I will be able to swim.(泳げるようになるだろう)
ふだんは can、助動詞と重ねたいときは be able to ── そう使い分けると整理できます。
意味2 ― 許可(〜してよい)
二つめは「〜してよい」という許可です。これは、可能性が許可や規則からくる場合です。
- You can go now.(もう行っていいよ)… 行くことが許されている
- You can use my pen.(私のペンを使っていいよ)… 使うことが許されている
- Can I sit here?(ここに座ってもいい?)… 座る許可をたずねる
「能力があるか」ではなく、「(状況や相手が)許していて可能だ」という意味です。You can go. は「行く能力がある」のではなく、「行くことが許されている」ということ。同じ can でも、可能性の源が「許可」に変わっているのが分かります。
may との関係
許可は、助動詞 may でも表せます。can と may には、少しニュアンスの差があります。
- You can go.(行っていいよ)… くだけた、ふつうの許可
- You may go.(行ってよろしい)… ややあらたまった、丁寧な許可
日常会話では can のほうが自然で、may は少しかしこまった響きになります。許可をたずねる Can I ~? も日常的によく使われますが、より丁寧にしたいときは May I ~? が好まれます。
意味3 ― 依頼(〜してくれる?)
三つめは、「〜してくれる?」という依頼です。これは、許可の can を相手に向けたもので、「あなたがそれをするのは可能か?」とたずねることで、お願いを表します。
- Can you help me?(手伝ってくれる?)… あなたが手伝うのは可能?
- Can you pass me the salt?(塩を取ってくれる?)… 取るのは可能?
「あなたにそれが可能か?」とたずねる形が、そのまま「してくれませんか」という依頼になります。ここでも、コアの「可能か」という判断が働いています。
より丁寧な Could you ~?
依頼をより丁寧にしたいときは、can の代わりに could を使います。
- Can you help me?(手伝ってくれる?)… ふつうの依頼
- Could you help me?(手伝っていただけますか?)… より丁寧な依頼
助動詞とはで、could は can の過去形だが「控えめなニュアンス」を出すのにも使われる、と見ました。これがその一例です。could を使うと、「もし可能でしたら」という控えめな響きが加わり、ていねいな依頼になります。ここでの could は過去の意味ではなく、丁寧さを出すための could です。
意味4 ― 可能性・推量(〜が起こり得る/〜のはずがない)
四つめは、「〜が起こり得る」という可能性です。これは、可能性が一般的な状況からくる場合です。特定の人の能力や許可ではなく、「そういうことは起こり得る」という、ものごとの可能性を表します。
- Accidents can happen.(事故は起こり得る)… 事故が起こることは可能
- It can be very cold here in winter.(ここは冬とても寒くなることがある)… 寒くなることは可能
- Anyone can make mistakes.(誰でも間違うことはある)… 間違うことは可能
「実際に起こっている」のではなく、「起こる可能性がある」という判断です。コアの「可能だ」が、一般的なものごとの可能性として使われています。
否定の can’t ― 「可能性がゼロ」=「〜のはずがない」
この「可能性」の意味は、否定にすると、とても強い表現になります。can の否定 can’t(cannot) は、「可能性がまったくない」、つまり「〜のはずがない」という意味を表します。
- It can’t be true.(それが本当のはずがない)… 本当である可能性はゼロ
- He can’t be at home now.(彼が今家にいるはずがない)… 家にいる可能性はゼロ
「可能だ」のコアを否定すると、「可能性がゼロだ=あり得ない」になります。だから can’t は、単なる「できない」だけでなく、「〜のはずがない」という、強い否定の推量を表すのです。
ここで、助動詞とはで見た must(〜に違いない)と並べると、関係がはっきりします。
| 助動詞 | 推量の意味 | 例文 |
|---|---|---|
| must | 〜に違いない(可能性が非常に高い) | He must be tired. |
| can’t | 〜のはずがない(可能性がゼロ) | He can’t be tired. |
「〜に違いない」の must と、「〜のはずがない」の can’t は、ちょうど正反対の推量を表すペアになっています。「彼は疲れているに違いない(must)」の否定は、doesn’t ではなく can’t(疲れているはずがない)で表す ── この対応も、can’t のコアが「可能性ゼロ」だと分かれば、自然に理解できます。
can の過去・未来
最後に、can を過去や未来で使うときの形を確認しましょう。
過去 ― could
can の過去形は could です。「〜できた」という、過去の能力や可能性を表します。
- I could swim when I was five.(私は5歳のとき泳げた)… 過去の能力
- We couldn’t find the key.(鍵が見つけられなかった)… 過去の否定
ただし、§5 で見たとおり、could は過去だけでなく、丁寧な依頼や控えめな推量にも使われます。could が出てきたら、「過去」なのか「丁寧・控えめ」なのか、文脈で見分ける必要があります。
未来 ― will be able to
未来の「〜できるだろう」は、will can とは言えません。助動詞とはで見たとおり、助動詞は二つ重ねられないからです。代わりに、can を be able to に置きかえて、will be able to とします。
- 誤:I will can swim soon.
- 正:I will be able to swim soon.(私はもうすぐ泳げるようになるだろう)
can の形をまとめると、次のようになります。
| 時制 | 形 | 例文 |
|---|---|---|
| 現在 | can | I can swim. |
| 過去 | could | I could swim. |
| 未来 | will be able to | I will be able to swim. |
| 否定(現在) | can’t / cannot | I can’t swim. |
| 疑問(現在) | Can ~? | Can you swim? |
つまずきポイント
can で間違えやすい点を整理します。
つまずき1:後ろの動詞を原形にしない
助動詞とはの共通ルールどおり、can の後ろは原形です。
- 誤:She can swims. / He can played the piano.
- 正:She can swim. / He could play the piano.
三単現の s や過去形を付けず、原形にします。過去のことなら、後ろの動詞ではなく can のほうを could に変えます。
つまずき2:can’t を「できない」だけだと思う
can’t を「能力的にできない」の意味だけで覚えていると、推量の can’t を読み違えます。
- He can’t be serious.(彼が本気のはずがない)
これは「彼は本気になれない(能力)」ではなく、「本気であるはずがない(可能性ゼロ)」という推量です。§6 のとおり、can’t には「〜のはずがない」という強い否定推量の意味があります。文脈で「できない」か「はずがない」かを見分けましょう。
つまずき3:will can と言ってしまう
未来の「できるだろう」を、will can としてしまう誤りです。
- 誤:I will can help you tomorrow.
- 正:I will be able to help you tomorrow.(明日は手伝えるだろう)
§7 のとおり、助動詞は重ねられないので、未来は will be able to です。
つまずき4:could を「過去」だけだと思う
could を見たら必ず過去、と思い込む誤りです。
- Could you open the window?(窓を開けていただけますか?)
これは「窓を開けられましたか?」という過去ではなく、丁寧な依頼です。§5 で見たとおり、could には「過去」のほかに「丁寧・控えめ」の用法があります。文脈で判断しましょう。
まとめ早見表
can の意味は、すべて「可能だと判断する」というコアから、可能性の源によって枝分かれします。
| 意味 | 可能性の源 | 例文 |
|---|---|---|
| 能力(〜できる) | その人・ものの能力 | I can swim. |
| 許可(〜してよい) | 許可・規則 | You can go. |
| 依頼(〜してくれる?) | 相手にたずねる | Can you help me? |
| 可能性(〜が起こり得る) | 一般的な状況 | Accidents can happen. |
| 否定推量(〜のはずがない) | 可能性がゼロ | It can’t be true. |
形の変化は、次のとおりです。
| 時制・形 | can |
|---|---|
| 現在 | can |
| 過去 | could |
| 未来 | will be able to |
| 否定 | can’t / cannot |
| 疑問 | Can ~? |
can は、「できる・してよい・してくれる?・あり得る」と、たくさんの意味を別々に覚えるものではありません。根っこにあるのは、**「それが可能だと判断する」**という、たった一つのコアイメージです。可能性がどこからくるのか ── 能力か、許可か、状況か ── で意味が変わるだけ。否定の can’t が「可能性ゼロ=のはずがない」になるのも、このコアから自然に説明できます。「これは何からくる『可能』か?」と問えば、can は迷わず使いこなせます。
次に読むとよい記事
can は、助動詞のコアイメージから意味が広がる、その代表例でした。関連する記事を合わせて確認しておきましょう。
- 助動詞とは ― 助動詞全体の共通ルールと、「判断を加える」という本質
- 否定文・疑問文の作り方 ― 助動詞が「自分で」否定・疑問を作る仕組み
- 助動詞 must ― 「強い断定」のコアから義務・推量へ広がる、must の深掘り
- 助動詞 may ― 許可・推量で can と重なる助動詞。くだけた can と正式な may の違い
- 助動詞 would ― 同じく過去形が「距離・丁寧」を生む助動詞。will の過去形 would